「素潜りって、免許とかライセンスって要るんですか」
始める前に、一度は検索する質問だと思います。「スキンダイビング ライセンス」「素潜り 免許」で調べると、資格のコースの広告と、「免許は要らない」というブログが並んで出てきて、どちらを信じていいか分からなくなります。
この記事は、免許の有無で止まっている方に向けて書きました。これから素潜りやスキンダイビングを始める方で、「何か取らないといけないのか」が引っかかっている方です。結論から言うと、レジャーの素潜りに、法律上の免許は要りません。 ただし、それで話が終わらないところがあります。要らないものと、現地で求められるものを、条文と団体の説明で分けます。
使ったのは、法令の条文(e-Gov)、Cカード協議会の説明、各団体の公式コース案内、現地の施設・ツアーの条件です。
持ち帰りは3つです。
- 国家資格の「潜水士」は仕事で潜る人のもの。休日に自分で潜る人には関係ない
- Cカードは免許ではなく認定証。発行する団体の協議会自身がそう書いている
- 法律が何も求めない分、現地やツアーが独自の条件を出す。それは法律ではなく、施設の決まり
「潜水士」は、仕事で潜る人の免許
日本に「潜水」の国家資格は、ひとつだけあります。潜水士です。根拠は労働安全衛生法と、その下の高気圧作業安全衛生規則です。
事業者は、潜水士免許を受けた者でなければ、潜水業務につかせてはならない。 — 高気圧作業安全衛生規則 第12条
主語が「事業者」であることに注目してください。この条文が縛っているのは、労働者を潜水業務に就かせる会社です。労働安全衛生法の第61条は、クレーンの運転などと並べて「政令で定める業務」に免許や技能講習を求めていて、潜水業務はその一つに入っています。港湾工事や水産の仕事で潜る人のための免許であって、休日に自分で海に入る人のための制度ではありません。
だから「素潜りに免許が要るか」への法律上の答えは、要らない、になります。シュノーケリングもスキンダイビングも、フリーダイビングも同じです。
Cカードは「免許」ではない
次に、よく「ライセンス」と呼ばれているCカードの話です。
Cカードを発行する各団体でつくる「Cカード協議会」(正式名称はレジャーダイビング認定カード普及協議会)は、公式サイトでこう書いています。
一般的には「ダイビングライセンス」と言われることもありますが、「ライセンス」という用語からは「免許証」というニュアンスが強く感じられます。Cカードは「免許」とは明確に意味合いが異なるもので、Cカードをそのまま日本語にすると「認定証」という訳になります。 — Cカード協議会
そして、認定証が何を証明しているかも書いています。
Cカードは、レクリエーション・スクーバダイビングに関して「定められた知識と技術(指導基準)」を、ある「特定の時期」に、ある「特定の場所」で、習得したことを証明するものです。ですからCカードは取得した時点から、将来に渡って知識や技術を保証しているものではありません。 — Cカード協議会
発行する側が、自分で「免許ではない」「将来を保証しない」と言っています。これがCカードの正体です。
スクーバのCカードの話をしましたが、スキンダイビングやフリーダイビングの認定も同じ構造です。民間団体が講習を修了したことを認定するもので、法律上の資格ではありません。
スキンダイビングの認定コースは、ある
免許ではないけれど、スキンダイビングにも認定コースはあります。公式ページで確認できたものを並べます。
| 団体・コース | 公式ページの記述 |
|---|---|
| PADI Skin Diver | 「スキンダイビングとは、息を止めて潜りながらシュノーケリングをし、水中の生き物を間近で観察すること」。8歳から |
| SSI Basic Freediver | 「プールまたは囲われた水域で、最大5mまで、バディと安全にフリーダイビングする方法を学ぶ」。10歳から |
| NAUI Skin Diver | 「修了者は、監督なしでオープンウォーターでの息止め潜水活動を行う能力があるとみなされる」。12歳から |
| Molchanovs Wave 1 | 前提は「プールで200mを休まず補助なしで泳げること」。認定後は「他の認定フリーダイバーの適格なバディ(一緒に潜って互いを見る相手)として行動できる」 |
認定が「何ができる」と言っているか
見比べると、団体ごとに「認定が何を意味するか」が違います。NAUIは「監督なしで」と書き、Molchanovsは「他の人のバディになれる」と書きます。SSIは最大5mのプールで止めています。どの認定を取るかより、その認定が「何ができると言っているか」を読むほうが大事です。 団体の比べ方はフリーダイビングの資格を比べた記事に書きました。
魚を突く・採るにも免許は要らない。ただし規則がある
もう一つの「免許」の話があります。魚を突いたり貝を採ったりすることです。
遊漁者に免許は要りません。ただし、都道府県ごとの漁業調整規則が、使える漁具と採ってよいものを決めています。水産庁は、都道府県の規則で遊漁者が使える漁具・漁法を一覧にしていて、潜水器(スクーバなど)を使いながら「やす」や「徒手採捕」で採ることはできないとしています。
やすの扱いは県で3通りに分かれます。一覧にあって除外のない県(東京都など)、一覧にあるがマスクを着けたら除外される県(静岡・神奈川)、一覧に語そのものがない県(千葉・和歌山など)。あわび・なまこ・うなぎの稚魚は、遊漁者の採捕そのものが法律で禁じられています。免許は要らないが、自由でもない。 県ごとの一覧は39県の一覧と魚突きの道具に置きました。
法律が求めないものを、現地が求める
ここからが、この記事で本当に伝えたいところです。
法律が何も求めない分、現地の施設やツアーが独自の条件を出します。それは法律ではなく、施設の決まりです。
- ハワイ・Ocean Freediving Internationalのラインダイビング(ロープを使った深さの練習会)は、参加を「AIDA・Molchanovsなどの団体でレベル2・Intermediate・Four Star以上の、オープンウォーターで認定された人」に限っています。公式ページに「OCEAN CERTIFIED」と大文字で書かれています
- ヒリゾ浜(南伊豆)は、10m以上を繰り返す潜水について「指導者またはツアー責任者による事前の届け出」を求めています。ヒリゾ浜の記事に書きました
- 大瀬崎の現地サービスは、ガイドなしで潜るダイバーの受け入れ目安を「経験本数100本以上、うち大瀬崎での経験本数30本以上」としています。大瀬崎の記事に書きました
どれも法律ではありません。だから場所ごとに違い、年ごとに変わります。「免許が要らない」と「どこでも自由に潜れる」は、別の話です。
免許が要らないことの、本当の意味
法律が免許を求めないということは、安全を保証する仕組みが、法律の側には無いということでもあります。車なら免許と車検と保険があります。素潜りには、そのどれもありません。
その空白を埋めているのが、講習で身につける手順と、一緒に入る人です。海上保安庁のガイドがスノーケリングにバディ行動を求め、各団体の認定が「バディとして行動できる」ことを一つの到達点にしているのは、そのためです。免許の代わりに要るのは、紙ではなく人です。
なぜ講習を受けるのか、という話はフリーダイビングの始め方となぜ溺れるのかに書きました。
この記事で確認できなかったこと
- 沖縄県の水難事故防止条例の条文原文。 事業者に届出と安全対策を課し、利用者に資格を課していない構造はツアーの選び方で扱いましたが、この記事のために条文を直接引き直すことはできませんでした
- PADI Skin Diverコースの現行の仕様。 公式ストアのページにAdvanced Snorkelerの記述が混ざっていて、コースが再編されている可能性があります
- 日本国内で「認定証の提示が無いと入れない」とする施設の公式原文。 今回確認できたのは、届け出(ヒリゾ浜)と経験本数の目安(大瀬崎)で、認定証そのものを条件にした国内の例は見つけられませんでした
- 海外の他の例(タイ・フィリピン)。 確認できたのはハワイの1件です
次の一歩
「何か取らないといけないのか」で止まっているなら、順番はこうなります。
- 免許は探さないでください。 存在しません。探す時間を、一緒に入る人を探す時間に回してください
- 認定を取るなら、「何ができると書いてあるか」で選んでください。 監督なしで潜れるのか、バディになれるのか、5mのプールまでなのか。団体で違います
- 行く場所の条件を、行く前に読んでください。 届け出、経験本数、年齢。法律ではなく施設の決まりなので、場所ごとに違います
まず、自分が行きたい海の名前と「ルール」で検索するところから始めてください。免許の代わりに要るのは、その場所の決まりと、隣で見ていてくれる人です。一緒に潜る人を探すなら、下の「近くの練習会を探す」から都道府県で引けます。海で守るのはこの3つだけです。
本記事は法令と各団体・施設の公式サイトの2026年8月22日時点の記述に基づく情報提供です。現地の条件は年によって変わります。行く前に必ず施設へ直接ご確認ください。
