「素潜りで働きたいんですが、潜水士の資格って要りますか」

この記事は、素潜りを仕事にしたい方、または素潜りの現場で働いている方に向けて書いています。

答えから言います。要りません。 潜水士免許が必要なのは、法律で「送気またはボンベからの給気を受けて」行う潜水業務だけで、給気を受けない素潜りはこの定義に入りません。

持ち帰りは3つです。

  1. 潜水士免許が要るのは「給気を受けて」行う潜水業務だけです。 素潜りは定義の外にあります。
  2. 素潜り漁師や海女は、免許ではなく漁業権と漁協の枠組みで働いています。 詳しくは別記事に譲ります。
  3. 沖縄で潜水やスノーケリングの案内業を営むなら、条例の届出とガイドの配置が別に必要です。 資格の取得を義務付ける条文はありません。

潜水士免許が要るのは、どんな潜水ですか

労働安全衛生法施行令第20条9号は、潜水士免許を要する業務をこう定義しています。「潜水器を用い、かつ、空気圧縮機若しくは手押しポンプによる送気又はボンベからの給気を受けて、水中において行う業務」です。高気圧作業安全衛生規則(高圧則。潜水や高気圧の作業を定めた厚生労働省令)第1条の2は、この定義をそのまま「潜水業務」と呼んでいます。同規則第12条は、事業者に対して、免許を受けた者以外を潜水業務に就かせることを禁じています。

「給気を受けて」に素潜りは入りません

条文の中心は「送気又はボンベからの給気を受けて」の部分です。空気圧縮機からホースで送気を受ける、あるいはボンベを背負って給気を受ける潜水が対象です。息を止めて潜る素潜りは、どちらにも当たりません。深さや潜る目的が仕事かどうかに関係なく、給気を受けていなければ「潜水業務」そのものに入らないというのが、この条文の作りです。

職種で見ると、要る・要らないはどう分かれますか

同じ「水中で働く」でも、給気の有無で法律上の扱いは大きく分かれます。代表的な働き方を並べました。

職種 国家資格の要否 根拠
給気を伴う潜水業務(スクーバ等の作業) 潜水士免許が必要 高圧則第12条・施行令第20条9号
素潜り漁師・海女 不要(漁業権・漁協の枠組み) 施行令第20条9号の定義(給気を受けない)
フリーダイビング/スキンダイビングの指導者・ガイド 国家資格は無し。民間認定が業界標準 施行令第20条9号の対象外
沖縄県内で潜水・スノーケリングの案内事業 届出とガイド配置が必要(資格取得の義務は条例本文に無し) 沖縄県条例(R8版)第15条・第22条・第23条
潜水士の国家資格が必要な働き方を4つに分類した一覧。給気を伴う潜水業務は資格が必要、素潜り漁師・海女とフリーダイビング指導者は資格不要、沖縄の案内業は届出とガイド配置が必要。
図: 労働安全衛生法施行令・高気圧作業安全衛生規則・沖縄県条例からBLUE BREATHが分類(2026年8月23日時点)。

素潜り漁師と海女の具体的な働き方は、海女の仕事の実際にまとめています。フリーダイビングの指導者・ガイドが取る民間認定は、フリーダイビングの資格を比較した記事にまとめました。取得の手順はスキンダイビングの資格の取り方を見てください。

潜水士試験はどんな試験ですか

潜水士免許は、試験に合格すれば取れます。安全衛生技術試験協会は、受験資格について「不要。ただし、本人確認証明書の添付が必要です」としています。年齢の下限だけは別で、規則では18歳未満の人は免許を受けられません。

科目ごとの得点基準があります

学科試験は4科目・40問・100点満点です。内訳は潜水業務10問30点、送気・潜降及び浮上10問25点、高気圧障害10問25点、関係法令10問20点です。試験時間は4時間です。合格基準は次のとおりです。

科目ごとの得点が40%以上で、かつ、その合計が60%以上であること — 安全衛生技術試験協会「潜水士免許試験」概要ページ

沖縄で案内業をするなら、何が要りますか

沖縄県条例は、潜水を「水中において給気を受けることのできる器具を用いて、水中に潜ること」、スノーケリングを「スノーケルを用いて、遊泳すること」と定義しています。この条例で「潜水業」「スノーケリング業」を営む事業者には、2つの義務があります。事業を始める日の10日前までに公安委員会へ届け出ることと、事業所ごとにガイドダイバー(自ら潜水し、潜水者を案内・指導する者)を置くことです。届出を怠ると10万円以下の罰金です。

資格の取得までは条例で義務付けていません

条文が求めているのは届出とガイドダイバーの配置で、ガイドダイバー自身が特定の資格を取ることまでは義務付けていません。公安委員会がガイドダイバー向けの講習を行える規定はありますが、任意です。そのため、素潜り漁師・海女や指導者と同様、沖縄の案内業でも国家資格そのものは求められていません。沖縄でのツアーの選び方は沖縄シュノーケリングツアーの選び方にまとめています。

この記事で確認できなかったこと

  • 沖縄県条例が「潜水」「スノーケリング」を定義する条項の、令和8年改正後の条番号。
  • スクーバ器材を使わず、素潜りだけを案内するガイド業が、条例の「潜水業」に当たるかどうかの明確な線引き。

次の一歩

  1. 自分の潜り方が「送気やボンベからの給気を受けるか」を確認してください。 給気を受ける潜水なら潜水士免許が必要です。
  2. 沖縄で案内業を始めるなら、事業開始の10日前までに公安委員会へ届け出て、ガイドダイバーを配置してください。 具体的な書式は県警のサイトで確認してください。
  3. 民間の認定を取りたい場合は、フリーダイビングの資格を比較した記事を読んで、自分の潜り方に合うものを選んでください。

潜る前の共通の注意は安全の原則にまとめています。

本記事は2026年8月23日時点で公開されている法令・規則・行政資料に基づく情報提供であり、法律の助言ではありません。個別の事案については、都道府県労働局、沖縄県公安委員会、または弁護士にご相談ください。