「うちの子、何歳から連れて行っていいですか」
旅行先で子どもと海に入るとき、たいていの親がここで止まります。調べると、どのページもひとつの数字を答えとして出してきます。ところがページごとに、その数字が違います。
この記事は、子どもを海に連れて行こうと考えている親の方に向けて書きました。先に結論を言うと、この問いに単一の答えはありません。 数字が割れているのは情報が古いからではなく、誰も統一していないからです。
持ち帰りは3つです。
- 年齢の数字で決めるのをやめてください。 出典によって0歳から18歳まで散らばっていて、比べる意味がありません
- 耳が痛いと言ったら、その時点で終わりにしてください。 子どもの耳は、大人の小さい版ではありません
- 息を止める時間を競わせないでください。 潜って貝を見る遊びまで止める必要はありません
ここから下は、その根拠です。急ぐ日は、上の3つだけ持って海に行ってください。
出典を並べると、0歳から18歳まで散らばります
認定団体とツアー事業者が公表している年齢の下限を、そのまま並べてみます。
同じ「水にもぐる」という行為に、制限なしから18歳までの幅があります。 国の法令にも業界の統一基準にも、この年齢を決める根拠はありません。それぞれが自分の設計思想で線を引いています。
ツアー事業者に絞ると、下限は1歳から5歳の間に散らばっていました。石垣島の川平湾で3歳から、沖縄の青の洞窟で1歳から、伊豆で5歳からといった具合です。同じ内容の遊びに、4年の開きがあります。
なぜ4歳と18歳に割れるのか
割れて見えるのは、団体が違うものを設計しているからです。
Molchanovsは、4歳から15歳までを対象にしたジュニア向けの枠を持っていて、その中を4〜7歳、8〜11歳、12〜15歳の3つに分けています。年齢で線を引くのではなく、年齢帯ごとに内容を変える設計です。
一方でAIDAは、AIDA1もAIDA2も18歳を下限にしています。16歳と17歳は保護者の署名があれば受講できます。こちらは競技の団体なので、講習の中身が息こらえと深度の話になります。
PADIとSSIのフリーダイバーが12歳、PADIのバブルメーカーが8歳、ジュニアオープンウォーターが10歳と並ぶのも同じ理由です。「シュノーケリング」「フリーダイビング」という言葉が、団体ごとに違う中身を指しています。 その違いはシュノーケリング・スキンダイビング・フリーダイビングの違いにまとめました。
年齢の代わりに、親が見るもの
数字が当てにならないなら、何を見ればいいのか。一次資料から拾えるものは3つでした。耳と、溺れ方と、息の止め方です。
① 子どもの耳は、大人の小さい版ではありません
潜ったときに耳へ空気を送る通り道になるのが、鼻の奥と耳の中をつなぐ細い管(耳管)です。日本小児感染症学会の資料は、これが子どもと大人では形からして違うと書いています。太く、短く、水平に近い形をしています。そして自分で空気を送る力は、7歳以上で育ってくるとされています。
小児の耳管の構造は,成人と比較してより太く,短く,水平に近くなっている.また,耳管の能動的換気能は7歳以上で発達してくるといわれており,幼小児期は耳管の機能も未熟である. — 日本小児感染症学会『小児感染免疫』
同じ資料には、子どもが中耳炎になりやすい要因の表があります。そこに並んでいるのが、無理な耳抜き、スイミング(飛び込み、もぐり、クイックターン)、風呂でもぐる、飛行機に乗った後、といった項目でした。
「もぐる」ことが、要因の表そのものに載っています。 潜らせてはいけないという意味ではありません。ただ、大人が3mで感じる耳の痛みと、子どもが同じ深さで受けている負荷は別物だと考えてください。耳が痛いと言ったら、その時点で終わりです。大人の耳抜きの話は耳抜きで耳が痛いにあります。
② 子どもは、静かに溺れます
消費者庁の注意喚起に、覚えておくべき一文があります。
子どもは声や音を出さず静かに溺れることもあります。少しの時間、少しの水量と油断せず、子どもの見守りと合わせて溺水事故が起こらない環境づくりを行いましょう — 消費者庁
映画で見るような、水しぶきを上げて助けを呼ぶ姿にはなりません。近くにいても気づけないことがあります。
警察庁の統計を見ると、場所の傾向も分かります。令和7年に水難にあった中学生以下は177人で、そのうち亡くなったか行方不明になったのは27人でした。発生場所は海が12人、河川が12人で、ちょうど半々に割れています。行為別で最も多いのは水遊びの11人で、全体の40.7%を占めました。
大人を含む全体では、亡くなった760人のうち海が352人(46.3%)、河川が282人(37.1%)です。大人は海が突出しますが、子どもは河川が海と並びます。 海だけ気をつければいいわけではない、ということです。
警察庁の呼びかけはこうなっています。
子供の水難防止のため、子供一人では水遊び等をさせず、幼児や泳げない学童等には、必ずライフジャケットを着用させ、その者を保護する責任のある者が付き添うなどして、目を離さないようにする。 — 警察庁
③ 息を止める練習は、させないでください
水中で意識を失う事故について、米国国立生物工学情報センターの資料(StatPearls)は、40歳未満の男性に最も多く起き、致死率が高いと書いています。この資料が、知っておくべき対象として挙げているのが、親、教師、公衆衛生の看護師、水泳のコーチ、ダイビングのインストラクター、軍の教官です。親が最初に挙がっています。
怖いのは、苦しくならないまま意識が消える点です。息を我慢する時間を競わせると、その状態に一直線で近づきます。仕組みそのものは息止めの練習はなぜ危ない? 苦しくないまま気を失う理由に書きました。
潜って貝を見る遊びまで止める必要はありません。止めるのは、時間を競わせることです。
ライフジャケットは、体重で選びます
国土交通省のページによると、子ども用のライフジャケットは1歳以上12歳未満を対象にしていて、体重ごとにサイズが分かれています。
| 体重 | 必要な浮力 |
|---|---|
| 15kg未満 | 4kg以上 |
| 15kg以上40kg未満 | 5kg以上 |
| 40kg以上 | 7.5kg以上 |
サイズが合っていないと、水中で体から抜けてしまいます。大きめを買って長く使う、という選び方ができないものです。
この記事で確認できなかったこと
- PADIのスキンダイバーコースの最低年齢(8歳が流通しているが公式ページで未確認。図には入れていません)
- 日本の団体(JUDF・JUSF・日本フリーダイビング協会)の年齢規定
- 潜水と小児の中耳炎の因果関係を数量で示した研究(要因の一覧はあるが、どのくらい増えるかの数字は無し)
次の一歩
子どもを海に連れて行くなら、順番はこうなります。
- 年齢の数字で決めるのをやめてください。 出典によって0歳から18歳まで散らばっていて、比べる意味がありません
- 申し込む前に、その事業者の年齢の下限を直接確認してください。 1歳から受ける店も、5歳からの店もあります
- 耳が痛いと言ったら、その時点で終わりにしてください。 我慢させて続けないでください。子どもの耳は構造から違います
- 時間を競わせないでください。 息を止める遊びだけは、はっきり止めてください
- 体重に合ったライフジャケットを用意してください。 大きめでは抜けます
- 手の届く距離にいてください。 静かに溺れます
親の側が先に体験しておくと、水の中で子どもが何に困るのかが分かります。下の「近くの練習会を探す」から都道府県で拠点を探せます。親子で参加できるところもあるので、申し込むときに年齢のことを一緒に聞いてみてください。
本記事は各公式サイトおよび公的資料の2026年8月21日時点の記述に基づく情報提供です。医学的な助言ではありません。耳の不調や持病がある場合は、必ず医師にご相談ください。
