「40代になって息が続かなくなった気がする、年齢で息止めは短くなりますか」
この記事は、そう調べている方に向けて書きました。答えから言います。健康な大人の範囲では、年齢で息止めが短くなるとは言えません。25〜85歳を4つの層で比べた研究では、どの層も平均47〜51秒でした。
数字が人によって30秒だったり50秒だったりするのは、年齢より「どう吸ってから止めたか」の差です。
持ち帰りは3つです。
- 年齢のせいにしなくて大丈夫です。 75歳以上の平均も47秒でした
- 比べるなら、同じ吸い方で比べてください。 ふつうに吸うか、大きく吸うかで20秒変わります
- 子どもの数字は無いので、競わせないでください。 資格の下限は12〜18歳です
25歳から85歳まで、平均は47〜51秒
Trembach と Zabolotskikh が2017年に発表した研究があります。25〜85歳の健康な47人(男性23人・女性24人)を、4つの年齢層に分けて息止めを測ったものです。
| 年齢層 | 人数 | 息止めの平均 |
|---|---|---|
| 25〜44歳 | 14人 | 51 ± 13 秒 |
| 45〜59歳 | 13人 | 48 ± 11 秒 |
| 60〜74歳 | 12人 | 48 ± 8 秒 |
| 75歳以上 | 8人 | 47 ± 7 秒 |
全体の平均は49±10秒。論文は「年齢と息止めの長さに相関は無かった(r=0.13)」と書いています。測り方は、肺活量の3分の2を吸ってから止める、それを10分おきに3回、朝食前に行う、というものです。
4つの層の差は4秒で、ばらつき(±7〜13秒)の中に収まっています。年齢で線は引けません。
大学生78人は30秒、差は年齢ではなく吸い方です
一方で、2025年に大学生78人(平均21歳)を測った研究では、座って安静にした状態の平均は29.67秒でした。息止めの平均は何分?で紹介した数字です。
若いのに20秒短くなっています。これは年齢の話ではありません。こちらは「ふつうに吸って止める」を1回、上の研究は「肺活量の3分の2を吸って止める」を3回の最大です。吸う量と回数が違えば、同じ人でも20秒は動きます。同じ大学生の研究でも、最大まで吸うと30秒が54秒に延びています。
比べるなら同じ吸い方で
だから自分の数字を「平均」と比べるときは、どの平均と比べているかを見てください。年齢別の表を探すより、同じ吸い方で測った数字と比べるほうが意味があります。
子どもの平均は、見つけられませんでした
「小学生の息止めの平均」を測った研究は、今回調べた範囲では見つけられませんでした。小児の呼吸の基準値はあっても、息止めの秒数ではありません。
数字が無い理由のひとつは、子どもに息止めを競わせること自体が危ないからです。苦しくないまま気を失う仕組みは年齢に関係なく働き、水の中なら溺れます。
代わりに、資格団体が年齢の線を引いています。
- PADI フリーダイバー: 15歳から。学科とプールだけの PADI ベーシックフリーダイバーは12歳から
- AIDA2: 18歳から。16〜17歳は保護者の署名があれば受講できます
つまり、子どもに「何秒止められるか」を測らせる場面は、どの団体の教程にも無いということです。
上の年齢の線は、秒数ではなく海が決めています
息止めの秒数では75歳以上も若い層と変わりませんでした。それでも上限の年齢を書いている会社はあります。御蔵島のドルフィンスイムで「65歳まで」とする会社、沖縄のシュノーケリングツアーで61歳や75歳で線を引く会社です。
線を引いているのは秒数ではなく、足のつかない海で船に戻れるか、持病があるか、という海側の条件です。シュノーケリングは何歳まで?に、会社ごとの線と診断書の話を書いています。
この記事で確認できなかったこと
- 小学生・中学生の息止めの平均を測った研究
- 肺活量が何歳で最大になり、年に何%下がるかを示す日本の公式基準値の原文
- 日本の公的機関による「息こらえ遊び」への注意喚起の文書
次の一歩
自分の数字を知りたいなら、このページのタイマーで、座ったまま、ふつうに吸って止めてみてください。30秒前後なら大学生の平均と同じです。それを延ばすより先に、「息止めの練習はなぜ危ない?」を読んでおいてください。年齢に関係なく、息止めで一番大事なのは秒数ではなく、ひとりでやらないことです。
