「重りって、結局何kgつければいいんですか。ネットで調べても人によって数字がバラバラです。」

この記事は、素潜りを始めたばかりで、ウェイトの重さをどう決めればいいか迷っている方に向けて書いています。

答えから言います。AIDAもPADIも、「何kg」という一律の数字は決めていません。 基準にしているのは、水面で息を吐いても沈まないかどうかという行動のテストです。

持ち帰りは3つです。

  1. 基準は「吐いても浮く」ことで、kg数ではありません。 AIDAは水面で息を吐いても沈まない状態(Surface Exhale Test)、PADIはわずかに浮く状態(positively buoyant)を目安にしています
  2. kgの参考値を出しているのはPADI公式ブログだけです。 スーツの厚さ別に3mm1〜2kg・5mm3〜4kg・7mm5〜6kgという数字を挙げています
  3. 付けすぎは、気を失った時に一番危険です。 DANは致死事故の共通因子に「重りのつけすぎ」を挙げています

AIDAとPADIは、kgでなく「浮くかどうか」で判定します

AIDAのレベル2ガイドライン(v3.4・2024年4月)があります。受講者について「息を吐いた後に水面から沈まないように重りを調整すること」と定めています。これがSurface Exhale Test(水面呼気テスト)です。数字は書かれていません。

PADI公式ブログも同じ方向です。水面では、わずかに浮く「陽浮力」(positively buoyant)の状態を推奨しています。安全のため、そしてリラックスするためです。どちらの団体も、判定はkg表示ではなく行動で行います。

やり方は「息を吐いて、沈むかどうか」だけです

水面に浮いた状態で、大きく息を吐きます。そのまま沈み始めるなら重りが重すぎ、浮いたままなら適正です。PADIは「受動的な呼気の後も、水面で快適に浮いていられること」を目安に挙げています。重りの調整は1〜2kg(1〜2ポンド)単位で、少しずつ行うよう勧めています。

数字を出す団体と出さない団体は、ここが違います

AIDA・PADI・DANの3団体について、重りに関する基準と具体的な数字の有無を確認しました。

団体 基準にしていること 具体的な数字(kg)
AIDA(国際フリーダイビング協会) 水面で息を吐いても沈まないこと(Surface Exhale Test) 出していません
PADI(潜水指導団体) 水面でわずかに浮くこと(positively buoyant) 公式ブログのみ:3mm 1〜2kg・5mm 3〜4kg・7mm 5〜6kg
DAN(潜水医学の国際団体) 重りのつけすぎを致死事故の危険因子として挙げること 出していません
素潜りの重りに関する団体別の基準と数字の有無を分類した一覧。AIDAとDANは行動基準のみでkgの数字を出さず、PADI公式ブログだけがスーツ厚別の参考値(3mm1〜2kg・5mm3〜4kg・7mm5〜6kg)を示している。
図: AIDA名義のガイドライン・PADI公式ブログ・DAN Worldの記事からBLUE BREATHが分類(2026年8月23日時点)。

数字を出しているのはPADI公式ブログだけで、それもスーツの厚さに対する参考値です。体格や経験、使う器材によって、必要な重さは変わります。この数字をそのまま使うより、水面テストで自分に合わせる方が確実です。

中性浮力の深さも、団体によって言い方が違います

PADI公式ブログは、中性浮力になる深さの目安を示しています。目安は「計画している最大深度のおよそ3分の1、または水深5メートルあたり」です。別の記事では「3分の1・最大深度の半分・10メートルのいずれか」という説明もあります。団体内でも表現に幅があります。

浅いブラックアウト(意識消失)の多くは、水面から10〜5メートルの範囲で起きます。PADIはそう説明しています。中性浮力の深さは、この範囲と重なります。重りの設定は、ここで沈みすぎないかどうかも確認してください。

付けすぎが一番危険です — 気を失うと、自力では浮けません

DAN World(Alert Diver)は、致死的なブラックアウトに共通する要因を3つ挙げています。無理をした(overexerted)・重りをつけすぎた(overweighted)・見守りが不十分だった(undersupervised)、の3つです。気を失うと、自分で浮く動作ができなくなります。水面でわずかに浮く重さにしていないと、そのまま沈む方向に働きます。

救助では、まず全てのウェイトを外します

AIDAのガイドラインは、救助の実技についても定めています。気絶したダイバーからは、全てのウェイトを取り外す、または取り外す動作をします。付けすぎたウェイトは、本人にとってだけでなく、一緒に潜るバディ(相棒)にとっても負担になります。救助の手順はブラックアウトとバディの救助にあります。

ベルトと重りの配置にも実務上のコツがあります

Cressi公式は、伸縮性のある素材で潜行中に自然に体へフィットするラバーベルトを紹介しています。Molchanovs公式も、ラバーやシリコン製のベルトを勧めています。スクーバダイビングで使うナイロンベルトとは違う素材です。重りは1kg以下の小さな単位に分け、ウェットスーツ全体へ均等に配置する方法を挙げています。スーツの厚さが変わると、必要な重さも変わります。厚さ別の目安はスーツの厚さの選び方で確認してください。

日本の統計に、重りが原因という記述はありません

警察庁「令和6年における水難の概況等」を確認しました。海上保安庁第七管区の資料も確認しました。どちらにも、重り・ウエイトを原因とする記述は見つかりませんでした。シュノーケリングでの死者・行方不明者数は、令和6年で20人という統計があります。ただし要因を重りの有無で分けた分析はありません。正直に「無い」とお伝えします。

この記事で確認できなかったこと

  • AIDA公式サイトでの同一ガイドラインの直接確認
  • Mares公式サイトのウェイト目安
  • ネックウェイト(首にかけるタイプの重り)など個別製品ページの情報

次の一歩

  1. 潜る前に、水面に浮いた状態で大きく息を吐き、沈まないか確認してください。 これが唯一の共通基準です
  2. 重りは1〜2kg単位で少しずつ調整し、一人ではなく経験者と一緒に行ってください。 沈み始めたときに支える人が要るためです
  3. スーツの厚さを変えたら、重りも見直してください。 浮力とダックダイブ(頭から潜る動作)の原理はこちらの記事に、服装の考え方はこちらの記事にあります

The rescue scenario will start under water and must include the removal or simulated removal of all weights from the blacked out diver. — AIDA フリーダイバー・ガイドライン(レベル二)

安全に関わる共通の注意は安全の原則にまとめています。

本記事は2026年8月23日時点で確認できた各団体の公式資料に基づく情報提供であり、指導や医学的助言ではありません。実際の重量設定・練習は、資格を持つ指導者の指示に従ってください。