「サザエを2個だけ持ち帰ったくらいで、まさか懲役にはなりませんよね」

この記事は、密漁の罰則がどれくらい重いのか気になっている方に向けて書いています。

答えから言います。遊漁者(漁師ではなく趣味で採る人)が問われる密漁の罰則は、1種類ではありません。 何を、どこで採ったかによって、罰金10万円から3,000万円まで重さがまったく違う3段階に分かれています。

持ち帰りは3つです。

  1. 一番軽いのは、都道府県の規則そのものへの違反です。 漁具や禁止区域の規則を破ると、6月以下の拘禁刑(刑務所に収容される刑罰)または10万円以下の罰金です。
  2. サザエやタコなど漁業権の対象種を無許可で採ると、100万円以下の罰金です。 ただし親告罪(告訴がないと起訴されない罪)で、告訴が起訴の前提になります。
  3. あわび・なまこ・しらすうなぎは別格です。 持ち帰るだけで3年以下の拘禁刑または3,000万円以下の罰金です。漁業権の有無は関係ありません。

密漁の罰則は、対象がどれだけ守られているかで変わります

漁業法の罰則は、密漁という行為をひとまとめにして裁いているわけではありません。何を対象にしたかで、適用される条文と重さがまったく別物になります。

一番軽いのは、県の規則そのものへの違反です

竿の本数や網の目の大きさ、禁止区域といった都道府県ごとの漁業調整規則に違反すると、漁業法第119条第4項が上限を定めています。6月以下の拘禁刑、10万円以下の罰金、拘留もしくは科料、またはこれらの併科です。3段階の中では最も軽い罰則ですが、無罪ではありません。

3つの類型と罰則

対象・行為ごとに、法定刑と告訴の要否、没収の可否をまとめました。

類型 典型例 法定刑 告訴が要るか 没収
県規則違反(漁業法第119条第4項) 漁具・禁止区域・体長制限などの規則違反 6月以下の拘禁刑・10万円以下の罰金・拘留もしくは科料またはこれらの併科 不要 規則で定めれば可能
漁業権侵害(漁業法第197条) サザエ・アサリ・ワカメ・タコなど対象種の無許可採捕 100万円以下の罰金 必要(親告罪) 規定なし
特定水産動植物(漁業法第190条) あわび・なまこ・しらすうなぎの採捕、密漁品と知っての運搬・保管・購入 3年以下の拘禁刑または3,000万円以下の罰金 不要 可能(第194条)

掲示に旧番号が残っていることがあります

水産庁の資料は、漁業法が改正される前の条番号で密漁対策を説明していました。特定水産動植物の罰則が旧189条、漁業権侵害が旧195条です。令和2年12月の改正で番号が振り直されました。現行では特定水産動植物が190条、漁業権侵害が197条です。県や市の掲示に旧番号が残っている場合があるので、条番号ではなく罰則の中身で確認してください。

横須賀市の「6月/10万円」は、197条の罰則ではありません

横須賀市の案内ページは、共同漁業権の対象種を組合員以外が採ると漁業権の侵害になる恐れがあると説明しています。そのうえで罰則として「6月以下の懲役若しくは10万円以下の罰金」を挙げています。これは漁業権侵害(197条・100万円以下の罰金)の罰則ではありません。県規則違反(119条4項・6月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金)のものです。同じページに二つの類型が並んでいるので、どの行為にどの罰則が付くかを読み分けてください。

令和6年は1,661件が検挙されました

水産庁の集計では、令和6年の海面での密漁検挙は合計1,661件でした。内訳は漁業者が131件、漁業者以外が1,465件、その他が65件です。品目別では貝類が998件で最も多く、サザエ349件・あわび118件などが含まれます。なまこ・たこ・うにを含む「その他水産動植物」は169件でした。うち、なまこ59件・たこ50件・うに46件です。

タコとウニの規則は、素潜りでタコを採ったら違法?素潜りでウニは違法?にそれぞれまとめています。

令和6年の海面密漁検挙1,661件のうち、品目別の件数を示す横棒グラフ。貝類が998件で最多、内訳はサザエ349件・あわび118件。その他水産動植物169件の内訳はなまこ59件・たこ50件・うに46件。
図: 水産庁「参考資料(密漁の現状について)」からBLUE BREATHが分類(2026年8月23日時点)。

実際の罰金額は、上限より軽いことが多いです

3,000万円や100万円は、あくまで法定刑の上限です。第三管区海上保安本部の公表事例では、イセエビやサザエで罰金10万円から20万円という額が出ています。上限に近い額が科された事例は、この記事では確認できていません。

ただし、この事例集を載せている海上保安庁のページ自体が、漁業権侵害の罰則を「20万円以下」と書いています。これは改正前の額です。現行は197条の100万円以下です。ページの公開が令和2年で、同年12月の改正に追いついていません。上限を調べるときは、官公庁のページであっても法令本文にあたってください。

「知らなかった」は理由になりません

政府広報は、密漁で摘発された人がよく口にする言い訳を挙げて、通用しないと明言しています。

「少しくらいならいいと思った」「ばれると思わなかった」「捕ってはダメだと知らなかった」は通用しません。 — 政府広報オンライン配布資料(海上保安庁 第十管区海上保安本部奄美海上保安部)

釣りやシュノーケリング中に対象種がかかってしまった場合は、その場で海へ戻すよう案内されています。

あわび・なまこには、届出制度もあります

密漁の取り締まりとは別に、もう一つの制度があります。水産流通適正化法は、あわびとなまこを特定第一種水産動植物に指定しています。採捕した業者が届出をしないまま流通させると、罰則の対象になる仕組みです。令和4年12月から施行されています。密漁そのものを取り締まる漁業法とは別に、流通の入り口でも網がかかっている制度です。

この記事で確認できなかったこと

  • 漁業権侵害(197条)の告訴権者が漁業協同組合に限られるかどうかの一次ソース。
  • 罰金10万円〜20万円の事例は、公表の年月を確認できていません。
  • 水産流通適正化法の届出義務違反が親告罪かどうか。

次の一歩

  1. 自分が採ろうとしている生き物が、その海域の漁業権の対象種かどうかを確認してください。 サザエやタコなど対象種は多く、漁業権侵害だけで100万円以下の罰金です。詳しくは素潜りでサザエ・アワビは違法?にまとめています。
  2. あわび・なまこ・しらすうなぎには、絶対に手を出さないでください。 特定水産動植物は漁業権の有無に関係なく禁止です。罰則も3年以下の拘禁刑または3,000万円以下の罰金と別格です。
  3. 判断に迷ったら、潜る前に地元の漁業協同組合か都道府県の水産担当課に確認してください。 「知らなかった」は、政府広報でも通用しないと明言されています。

道具の話や罰則の全国比較は素潜りで魚突きは違法?にまとめています。潜る前の共通の注意は安全の原則にあります。

第百三十二条第一項の規定に違反して特定水産動植物を採捕したとき 三年以下の拘禁刑又は三千万円以下の罰金に処する — 漁業法(昭和24年法律第267号)第190条第1号

本記事は2026年8月23日時点で公開されている法令・規則・行政資料に基づく情報提供であり、法律の助言ではありません。個別の事案については、都道府県の水産担当課、漁業協同組合、または弁護士にご相談ください。