「明日、素潜りに行く予定です。天気予報では波1mって出てるんですけど、これって潜って大丈夫なレベルですか」

この記事は、素潜りの計画を立てるときに天気予報の波の高さをどう読めばいいか迷っている方に向けて書いています。

答えから言います。「波の高さ何mまでなら素潜りOK」という数値の線は、公的機関にも事業者にも存在しません。 気象庁が予報で出す「波の高さ」は有義波高(波を高い順に並べた上位1/3の平均)で、実際の海面にはこれより高い波が混じります。中止するかどうかは、地域ごとの注意報・警報の基準と、その日の現地の判断で決まります。

持ち帰りは3つです。

  1. 予報の1mは平均で、最大値ではありません。 統計上、100波に1回は約1.5倍、1000波に1回は2倍近い波が来ます。
  2. 注意報・警報の基準値は地域ごとに違います。 注意報は東京地方1.5m、伊豆諸島南部・小笠原と静岡県は3.0mで出ます。
  3. 御蔵島・ヒリゾ浜・沖縄・JLAのどこにも「波高○m以上で中止」の数値基準は公表されていません。 最終判断は現地の旗と当日の運営者です。

予報の「1m」は、その日の平均です

有義波高とは何ですか

気象庁が予報で発表する「波の高さ」は、有義波高(ゆうぎはこう)と呼ばれる値です。連続する波を1つずつ観測し、波高の高い方から全体の1/3を選んで平均したものを指します。つまり予報の1mは、その日の海にある波のうち高い方1/3の平均値であって、最大値ではありません。

気象庁は、個々の波がこれよりどれだけ高くなるかも解説しています。

100個の波(おおよそ10〜20分)を観測した時の最も高い波は、統計学的には有義波高の約1.5倍になります。同様に、1000個の波(おおよそ2〜3時間)を観測した場合には、最大波高は統計学上、有義波高の2倍近い値と見積もられます — 気象庁「波浪の知識」

つまり予報が「波1m」でも、10〜20分観測すれば1.5m前後の波が、2〜3時間観測すれば2m近い波が混じる計算です。数千〜数万回に1回はさらに高い「巨大波」も起こり得ると気象庁は説明しています。この幅を知らずに予報の数字だけで判断すると、実際の海は予想より荒く感じます。

地域ごとに、注意報・警報の基準値が違います

自分が潜る地域の基準は何mですか

波浪注意報・警報(海の荒れを知らせる気象庁の発表)は、地域ごとに異なる有義波高の基準で出されます。東京管区気象台の基準表から、素潜りをする人が多い地域を並べました。

地域 注意報(有義波高) 警報(有義波高)
東京地方 1.5m 3.0m
伊豆諸島北部 2.5m 確認できず(基準表の列対応を確認しきれませんでした)
伊豆諸島南部・小笠原 3.0m 6.0m
静岡県全域 3.0m 6.0m
波浪注意報・警報の基準を地域別に示した図。東京地方は注意報1.5m・警報3.0m、伊豆諸島南部・小笠原と静岡県全域は注意報3.0m・警報6.0m(いずれも有義波高)。
図: 東京管区気象台「波浪等の注意報・警報基準」からBLUE BREATHが作成(2026年8月23日時点)。

これは海の荒れを示す気象の基準であって、素潜りをしていい・悪いを決める基準ではありません。ただ、注意報が出ているかどうかは、出発前に確認する目安になります。

うねりと風浪はどう違いますか

気象庁は、海の波を風浪とうねりの2種類に分けて説明しています。風浪はその場で吹く風によって生じる波で、うねりは風による発達が終わった後に残る波です。うねりは風浪より波長・周期が長く、離れた場所で吹いた風の影響が、天気の良い日でも届くことがあります。

うねりは浅い海岸付近で高くなりやすい性質があります。沖では気づかない高さでも、岩場やビーチの近くで急に立ち上がることがあるため、予報の数値だけでなく、現地に着いてからの見た目の判断が欠かせません。

現地に「波高○m以上で中止」という数値基準はありません

御蔵島やヒリゾ浜はどう判断していますか

御蔵島とヒリゾ浜の案内サイトを確認した範囲では、波の高さを示す数値基準は見当たりませんでした。海況が荒れると欠航や運航の変更が起きるという説明はありますが、「何m以上で中止」という線は示されていません。

JLAの旗はどんな基準で決めていますか

日本ライフセービング協会(JLA、海水浴場で監視や救助にあたる団体)が定めるサインフラッグ(海の危険度を示す旗)も、数値ではなく状態で示されています。赤旗は泳ぐこと自体が危険な状態、黄旗は波や沖に流される力がいつもより強い状態を意味し、どちらも波高の数値は使われていません。旗を立てる側が、その場の海を見て判断している形です。

沖縄では、スノーケリング中の事故が最も多く起きています

ライフジャケットを着けていないとどうなりますか

第十一管区海上保安本部(沖縄周辺の海を管轄する海上保安本部)によると、過去5年間(令和3〜7年速報値)のマリンレジャー人身事故は469人です。うちスノーケリング中が154人で最も多く、全体の33%を占めています。死者・行方不明者129人のうち63人もスノーケリング中でした。

スノーケリング中・遊泳中の事故238人のうち、ライフジャケット非着用は194人で82%です。この中で死者・行方不明者82人に絞ると、非着用は71人で87%まで上がります。年齢別では50歳以上が58人で71%を占めています。波の高さの数値基準が無い以上、装備と体調管理が最後の防波堤になっています。

この記事で確認できなかったこと

  • 御蔵島・ヒリゾ浜の案内サイトに、波の高さ以外の中止基準(風速・視界等)があるか
  • 伊豆諸島北部の警報基準値が、他の地域と同じ列に対応しているか

次の一歩

  1. 出発前に、気象庁の波浪予報とあわせて注意報・警報の発表状況を確認してください。 自分が潜る地域の基準値は、東京管区気象台など各地の気象台のページで見られます。
  2. 現地に着いたら、ツアーなら運営者の判断に、個人なら旗の色に従ってください。 予報が問題なくても、現地の見た目が優先です。
  3. うねりが強い日は、岸で波が急に高くなる前提で、無理をせず中止してください。 予報の数字より現地の海が優先です。

離岸流や溺水の起き方はシュノーケリング中に人が溺れる理由に、遊泳区域の外に出るリスクは遊泳区域の外は違法?にまとめています。伊豆諸島の船が欠航する条件は東海汽船の運休条件で扱っています。潜る前の共通の注意は安全の原則にまとめています。

泳いだら危険なので、ライフセーバーの指示に従い、泳がないでください — 日本ライフセービング協会「サインフラッグ(遊泳旗)」赤旗の説明

本記事は2026年8月23日時点で公開されている気象庁・海上保安庁・関係団体の資料に基づく情報提供であり、安全を保証するものではありません。実際に潜る可否は、現地の天候・海況と、施設・運営者の判断に従ってください。