「東海汽船が止まったら、島に行けなくなるのですか」
この記事は、伊豆諸島に潜りに行く予定があって不安になっている方に向けて書きました。答えから言います。処分はまだ出ていません(8月22日時点)。ただし出た場合、御蔵島は旅客が夜行の大型客船だけ、貨物船は週1便で、代わりはヘリの1日1往復しかありません。 新島や神津島には下田からの船と調布からの飛行機があります。
使ったのは、東海汽船の発表、関東運輸局の資料、国土交通省のガイダンス、e-Govの条文、各社の公式の航路表だけです。テレビの報道にある数字は、一次で確認できたものだけ使っています。
会社が自分で書いた3つ
東海汽船は2026年7月31日、自社サイトに「当社における不適切事案について」を出しました。
現在、当社における船員による酒気帯び乗務、アルコール検査の肩代わり、舷門未閉鎖の状態での運航等を理由として、国土交通省による海上運送法に基づく一般旅客定期航路事業の停止処分等に向けた当社に対する行政手続が行われております。 — 東海汽船(2026年7月31日)
認めているのは3つです。酒気帯びでの乗務。アルコール検査を別の人が受けたこと。舷門(乗り降りする船の横の出入口)を閉じないままの運航です。外部の専門家による調査委員会を設けるとも書いています。
各社の報道には「元日に10人以上が船内で飲んだ」「操船担当者も含まれていた」「8月21日に聴聞が行われた」とありますが、関東運輸局の発表では確認できていません。この記事では数字として扱いません。
どの条文に触れるのか
酒気帯びの当直は、濃度にかかわらず禁止です
船員法は、航海当直など航海の安全に関して船長が守る事項を国土交通省令に委ねています。その省令が船員法施行規則です。第3条の5第2項は、船長に当直者の酒気帯びの有無を確認させます。酒気を帯びている者に当直をさせてはならない、と定めています。
国土交通省海事局のガイダンスは、こう言い切っています。
アルコール濃度の数値に拘わらず、酒気帯び状態での航海当直業務は禁止されています。 — 国土交通省海事局「NO! 酒気帯び操船」
車の酒気帯び運転のような「0.15mg」の線はありません。2020年4月からは、港の中や湾内だけを走る船(平水区域)にも同じ禁止が及んでいます。
違反があると、国土交通大臣は船員法第101条第1項で是正を命じられます。命令に従わない場合は、同条第2項で船の航行停止を命じられます。入港する港も指定できます。
事業の停止と許可の取消しは、海上運送法第17条です
国土交通大臣は、一般旅客定期航路事業者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該事業の用に供する船舶、係留施設その他の輸送施設の当該事業のための使用の停止若しくは当該事業の停止を命じ、又は当該事業の許可を取り消すことができる。 — 海上運送法第17条
「次の各号」の最初が、この法律や処分に違反したときです。船の使用停止、事業の停止、許可の取消し、の3段階があります。処分の前に事業者の言い分を聞くのが「聴聞」です。行政手続法の手続きで、東海汽船の発表にある「行政手続」はこれを指します。
2025年4月にも命令を受けていました
関東運輸局は2025年4月1日、東海汽船に船員法第101条第1項の是正命令と、海上運送法第19条第2項の輸送の安全の確保に関する命令を出しています。原因は別件で、3つです。2024年6〜9月に大多数の船員を労働時間の限度(1日14時間・1週72時間)を超えて働かせたこと。非常時のための操練を長期にわたり実施しなかったこと。航海日誌に操練を実施したと虚偽の記載をしたこと(船員法第126条第1項第5号違反)です。今回の事案は、この命令から1年あまり後に起きています。
止まったら、島ごとに何が消えるか
東海汽船の公式の航路表と貨物スケジュールで、島ごとに並べました。
| 島 | 旅客(東海汽船) | 貨物船 | 東海汽船以外 |
|---|---|---|---|
| 大島 | ジェット船・大型客船 | 週4〜5便+伊東から週2便 | 新中央航空(調布)・ヘリ |
| 利島 | ジェット船・大型客船 | 週1便 | 神新汽船(下田)・ヘリ |
| 新島 | ジェット船・大型客船 | 週2便 | 神新汽船・新中央航空 |
| 式根島 | ジェット船・大型客船 | 週2便 | 神新汽船・新島から連絡船 |
| 神津島 | ジェット船・大型客船 | 週2便 | 神新汽船・新中央航空 |
| 三宅島 | 大型客船(夜行)のみ | 週2便 | 新中央航空・ヘリ |
| 御蔵島 | 大型客船(夜行)のみ | 週1便 | ヘリのみ |
| 八丈島 | 大型客船(夜行)のみ | 週2便 | ヘリ(空路は別会社・この記事では未確認) |
御蔵島だけ、船以外の手段がヘリしかありません。東京愛らんどシャトルは八丈島が拠点です。青ヶ島・八丈島・御蔵島・三宅島・大島・利島を1日1往復します。しかも御蔵島の港は外洋に面しています。通常でも着岸できない日が年に4割あります。その集計は御蔵島の行き方と料金にあります。停止の日数に、欠航の日数が足されます。
新島・式根島・神津島・利島は、下田から神新汽船が週6日(水曜運休)あります。調布からは新中央航空が大島・新島・神津島・三宅島へ飛んでいます。新島と式根島の記事に、運賃と所要を書いています。
この記事で確認できなかったこと
- 関東運輸局による今回の事案の発表(8月22日時点で公式サイトに見当たらず。報道の「10人以上」「元日」はここに拠る)
- 東京愛らんどシャトルの定員と、新中央航空の便数(公式ページで数字を確認できず)
- 八丈島の空路(別会社のため、この記事では扱っていません)
次の一歩
伊豆諸島に潜りに行く予定があるなら、順番はこうなります。
- 出発前に、東海汽船の「運航状況」と「お知らせ」を見てください。 処分が出れば同社は「速やかに公表」すると書いています
- 御蔵島なら、船が止まった日の帰り方を先に決めてください。 代わりはヘリの1日1往復だけです。御蔵島の行き方に欠航率を載せています
- 新島・式根島・神津島なら、下田と調布の便を予備に持ってください。 神新汽船は週6日、新中央航空は調布から飛んでいます
海に入ってからのことはこの3つだけにまとめています。
本記事は東海汽船・関東運輸局・国土交通省・e-Gov法令検索・東京都島しょ振興公社・神新汽船・新中央航空の2026年8月22日時点の公開情報に基づく情報提供です。処分の内容と時期は未確定です。旅行の前に必ず各社の公式サイトをご確認ください。
