「監視員のロープより少し外まで泳いでみたいのですが、条例違反になりますか」

この記事は、海水浴場の遊泳区域の外で泳ぐ・潜ることが条例違反になるか気になっている方に向けて書いています。

答えから言います。区域外で泳ぐこと自体を罰則付きで禁止した条例は見つかりませんでした。 条例が主に縛っているのは、区域に船を乗り入れる人・標識を壊す人・警察官の指示に従わない人です。

持ち帰りは3つです。

  1. 区域外で泳ぐ人への罰則は、調べた範囲では見つかりませんでした。 条例の多くは船舶側を規制する仕組みです
  2. 京都府だけ「遊泳場外で遊泳しないこと」を遊泳者の遵守事項に明記していますが、罰則はありません。 努力義務にとどまります
  3. 海水浴場の「遊泳禁止」看板と、条例の罰則は別物です。 藤沢市のルールは違反しても「協力を依頼する」までです

浜ごとのフィンやライフジャケットのルールは、海水浴場でシュノーケル・フィンは禁止?に譲ります。ここでは区域の内と外の話に絞ります。

区域の線は、誰のために引かれているのか

沖縄県条例第9条1項は、遊泳者と動力船・帆船が混在する場所を公安委員会が区域に指定すると定めています。和歌山県条例も第7条1項で、船舶の航行によって危険が生じるおそれがある場所を区域に指定する仕組みです。

つまり区域の線は、泳ぐ人を閉じ込めるために引かれているのではありません。船と泳ぐ人の水域を分けるために引かれています。区域の外に出ることは、船の航路に出ることと重なる場合があります。

条例が禁止しているのは「船が区域に入ること」です

和歌山県条例第8条は「何人も…遊泳区域に船舶等を乗り入れ、又は引き入れてはならない」と定めています。沖縄県条例第9条3項も、区域内での動力船・帆船の航行を原則禁止しています。規制の矛先は船側であって、区域の外に出た遊泳者ではありません。

県・市でルールはどこまで違うのか

和歌山・福島・沖縄・京都・石川の5県と、藤沢市の海水浴場ルールを公式資料で確認しました。

県・市 区域の定義(根拠条項) 区域外の遊泳者への規制 船側の規制 罰則
和歌山県 第7条1項=公安委員会が指定 無し 第8条=区域への船の乗り入れ禁止 標識損壊・危険行為・指示違反・届出違反(第22〜24条)
福島県 第8条1項=公安委員会が指定 無し 第8条2項=船の航行禁止 第24条
沖縄県 第9条1項=船と遊泳者の混在時に公安委員会が指定 無し 第9条3項=区域内での船の航行禁止 標識損壊3月以下懲役/30万円以下(第31条)・指示違反20万円以下(第32条)
京都府 第8条1項=知事が指定 有り(努力義務)=遵守事項に「遊泳場外で遊泳しないこと」 第9条1項=区域への船の進入禁止 罰則の定めなし
石川県 第2条1号・第4条4項=標旗・うき・ロープで区画 無し 確認できず 第14条
藤沢市(自主ルール) エリアフラッグで区画(条例でなく協議会ルール) 形式上あり・強制力なし 対象外 罰則なし・違反時は「協力を依頼する」
遊泳区域の外で泳いだ人への罰則の有無を県・市別に判定した一覧。和歌山・福島・沖縄・藤沢市は罰則なし、京都府は努力義務のみで罰則なし、石川県は船側の規制が確認できず。罰則があるのは主に区域に船を乗り入れた側。
図: 各県公式ページ・条例・藤沢市海水浴場ルールからBLUE BREATHが分類(2026年8月23日時点)。空欄は公式資料で確認できなかった項目。

石川県の「船側の規制」の空欄は、規制が無いという意味ではなく、今回調べた範囲で確認できなかったという意味です。潜る前に、その県や市の担当課に確認してください。

罰則があるのは、区域侵入・標識損壊・指示違反です

沖縄県条例では、標識を壊すと3月以下の懲役又は30万円以下の罰金です(第31条)。警察官の指示に従わなかった場合は20万円以下の罰金です(第32条)。和歌山県条例も同様に、標識損壊・危険行為・警察官の指示違反・届出違反に罰則を置いています(第22〜24条)。どちらも、区域の外で泳ぐこと自体への罰則ではありません。

看板の「遊泳禁止」と、条例の罰則は別物です

海水浴場でよく見る「遊泳禁止」「遊泳区域外」の看板は、条例そのものとは限りません。海水浴場を管理する協議会や自治体が独自に定めた運営ルールである場合があります。藤沢市の「海水浴場ルール」第28条は、利用者にエリアフラッグで定められた区域で泳ぐことを求めています。区域は海の状況で変わるため、監視員・ライフセーバーの指示に従うことも定めています。ただしこれは条例ではなく、地域の協議会が定めた自主ルールです。

違反した場合の扱いも、条例の罰則とは違います。同ルール第31条2項は「ルールの趣旨、目的を説明の上、協力を依頼する」としています。罰則の定めはありません。

公安委員会指定区域なら、別の条例の罰則が及ぶことがあります

一方で、区域が公安委員会や知事の条例で指定されている場所は違います。区域侵入・標識損壊・警察官の指示違反への罰則が別に定められています。看板だから守らなくていい、という話ではありません。看板の裏にある根拠が条例か自主ルールかで、罰則の有無が変わります。

区域の外は、監視員の目と船の航路の外です

第七管区海上保安本部の集計では、7月から8月の遊泳中の事故は過去10年間で198名です。うち溺水者は107名、死者・行方不明者は62名(58%)でした。これは同管区が管轄する九州北部の数字で、全国の数字ではありません。

日本ライフセービング協会は、ライフセーバーが旗を2本立てる仕組みを案内しています。その日の海を知るライフセーバーが、旗の間を安全な水域として示します。旗の外は、その表示の外側です。溺れる仕組みそのものはシュノーケリングはなぜ溺れる?に譲ります。事故統計の全体像は素潜りの事故は年に何件?にまとめています。潜る前の共通の注意は安全の原則にあります。

この記事で確認できなかったこと

  • 神奈川県「海水浴場等に関する条例」(昭和34年条例第4号)の本文
  • 石川県条例における船側の規制
  • 福島県・京都府条例の条文原文(条番号までの確認にとどまる)

次の一歩

  1. 自分が泳ぐ都道府県の条例名で検索し、区域の指定根拠が公安委員会か知事かを確認してください。 上の表は出発点で、正本は都道府県のサイトにあります
  2. 海水浴場で「遊泳禁止」の看板を見たら、監視員やライフセーバーの指示に従ってください。 自主ルールでも安全のための指示です
  3. 区域の外で泳ぐ前に、その場所に監視員がいるかを確認してください。 いない場所は、事故が起きても発見が遅れます

遊泳区域以外の水域で遊泳しない。 — 警察庁「令和6年における水難の概況等」留意事項

本記事は2026年8月23日時点で公開されている法令・条例・行政資料に基づく情報提供であり、法律の助言ではありません。個別の事案については、都道府県・市町村の担当課、または弁護士にご相談ください。