「川で泳いだり、素潜りをしたりするのは違法ではないか」と気になっている方へ。
この記事は、川での素潜りが法律上どう扱われるか迷っている方に向けて書いています。
答えから言います。川に入って泳ぎ、潜ること自体は「自由使用」にあたり、原則として誰でも自由です。 線が引かれるのは、この先の3つの場面だけです。
持ち帰りは3つです。
- 採ると別の話になります。 魚や貝を採ると、内水面(川や湖)の漁業権である第五種共同漁業権と、遊漁規則(遊漁券)の世界に入ります
- 潜水器・水中眼鏡は県ごとに規制があります。 和歌山県は潜水器での採捕を全面禁止、山梨県は規則本文で潜水器具と水中銃を禁止漁法に明記しています
- 水難事故は、海より河川で子どもの割合が高いです。 中学生以下の死者・行方不明者28人のうち18人(64.3%)が河川で発生しています
前提: 川に入ること自体は「自由使用」
河川は公共のものです。国土交通省の利根川下流河川事務所は、川の利用を「自由使用」と呼んでいます。「河川は公共のものですから、原則として誰もが自由に利用することができます」という説明です。泳ぐ・潜るを個別に禁じる条文は、河川法の利用制限の一覧には出てきません。
ただし何でも自由なわけではありません。水を取る(23条)、河川区域を占用する(24条)、砂利を採る(25条)には、河川法上の許可が要ります。工作物を作る(26条)や土地の形を変える(27条)も同様です。これらは素潜り自体を制限する条文ではありません。
規制の対象は「採る」行為です
今回確認した規則が規制しているのは、この後に説明する「採捕」という行為です。「採らずに潜って見ること」を禁じる条文は、確認した範囲では見つかりませんでした。ただし「見るだけなら合法」と公式に言い切った資料も見つかっていません。事実として言えるのは、規制の対象が「採る」行為に向いている、というところまでです。
採ると入る世界: 第五種共同漁業権と遊漁規則
川や湖で魚介類を採る権利は、第五種共同漁業権と呼ばれます。組合員以外が採るときの決まりが、水産庁のいう遊漁規則です。「漁協は、組合員以外の採捕(遊漁)について、知事の認可を受けて遊漁規則を定めています」という説明です。あゆや渓流魚を採るなら、遊漁料を払って遊漁承認証(遊漁券)を得るのが基本です。海の共同漁業権や貝の話は、素潜りでサザエ・アワビは違法?にまとめています。
潜水器・水中眼鏡・やすの扱いは県で違う
| 都県 | 潜水器・水中眼鏡 | やす・水中銃 | 代表的な禁漁期・区域 |
|---|---|---|---|
| 東京 | 規定なし(条文に用語が無い) | 規定なし | あゆ(全長10cm超)1/1〜5/31・多摩川の一部で禁止区域 |
| 神奈川 | 内水面で水中眼鏡(のぞき眼鏡除く)使用漁法を禁止。潜水器は海面の許可漁業のみ規定 | 内水面の規定は確認できず | あゆ1/1〜5/31・いわな等は魚種ごとに期間別 |
| 静岡 | 水中眼鏡(潜水器含む)を使うあゆ掛釣り漁法を禁止 | 鉄砲もりを禁止 | 灯火・網漁具(手網除く)も禁止。詳細期間は未確認 |
| 山梨 | 潜水器具を使う漁法を禁止(水中眼鏡は規定なし) | 水中銃を使う漁法を禁止 | あゆ12/1〜翌5/31(富士川5/15まで) |
| 和歌山 | 委員会指示で潜水器による採捕を全面禁止。規則は水中メガネの引懸け漁法も禁止 | 水中鉄砲・ヤス突き漁法を禁止 | 堰堤付近に禁止区域あり(詳細未確認) |
| 高知 | 潜水器漁法・水中眼鏡を使う漁法は原則禁止 | 規定を確認できず | 時期により使用可の河川あり(規則原文未取得) |
| 沖縄 | 潜水器具(スキューバ等)の使用を禁止 | 発射装置付きやすを禁止(発射装置なしは可) | 海域中心の資料で河川への適用は未確認 |
| 岐阜 | 規定を確認できず(条文に用語が無い) | 水中銃は通年禁止。もり・やす等は1/1〜8/15が禁漁期 | かき上げ/かき下げ漁法3/1〜6/30など魚種別 |
規則は改正されます。潜る前に、その県の最新版を自分で確認してください。
和歌山と山梨は禁止漁法に明記しています
和歌山県は、内水面漁場管理委員会の指示で潜水器による採捕を禁止しています。指示は「潜水器を用いて水産動植物の採捕をしてはならない」というものです。山梨県は規則本文の禁止漁法に「潜水器具使用」と「水中銃使用」を並べて明記しています。どちらも解釈の余地なく、条文にそのまま書かれています。
「規定なし」の理由は県で違います
東京都と岐阜県の規則を読んだ範囲では、「水中眼鏡」「潜水器」という語自体が出てきません。規定が無いのは、自由に使ってよいという意味ではなく、単に条文で言及していない状態です。神奈川県は内水面での水中眼鏡の使用漁法だけを禁止し、潜水器は海面の許可漁業としてのみ登場します。同じ「規定なし」でも、県によって理由が違います。
水難は、子どもだけ河川の割合が上がります
警察庁の「令和6年における水難の概況等」による死者・行方不明者816人のうち、河川は288人(35.3%)でした。海の372人(45.6%)に次いで2番目に多い場所です。
中学生以下に絞ると様子が変わります。中学生以下の死者・行方不明者28人のうち、河川は18人(64.3%)でした。全体では2位の河川が、子どもだけ見ると過半数を占めています。
ダムのサイレンは、迷わずすぐ岸へ
ダムがある川では、放流で水位が急に上がることがあります。国土交通省の相模川水系広域ダム管理事務所は「サイレンが鳴ったら川から離れてください」と案内しています。上流で雨が降れば、その場が晴れていても増水します。潜る前の共通の注意は安全の原則にまとめています。
西表島は「潜水禁止」ではなく「入域制限」
西表島のヒナイ川(ピナイサーラの滝)や浦内川源流域は、潜ることそのものを禁じているわけではありません。竹富町が定める特定自然観光資源として、立ち入る人数と方法を制限しています。
ヒナイ川は1日200人、浦内川源流域は1日50人が上限です。立ち入りには、登録引率ガイドの同行か、町が主催する講習の受講が必要です。これは自然環境を守るための入域規制であって、潜水そのものへの禁止ではありません。
この記事で確認できなかったこと
- 「採らずに潜って見るだけ」を明確に合法と述べた公式資料
- 長野県内水面漁業調整規則の本文(該当条文は未確認)
- 特定区間で遊泳そのものを禁止する一次資料(条例・規則)
次の一歩
- 魚や貝を採るなら、まずその川を管理する漁協に遊漁規則と遊漁券を確認してください。 上の表は潜水器・水中眼鏡の話で、採捕の許可とは別です
- 潜水器や水中眼鏡を使うなら、都道府県の内水面漁業調整規則を自分の目で確認してください。 上の表は出発点で、正本は県のサイトにあります
- ダムがある川では、サイレンが鳴ったらすぐに岸へ上がってください。 迷っている時間が一番危険です
魚突きの話は素潜りで魚突きは違法?、水温や時期の話は素潜りの時期はいつ?にあります。
河川は公共のものですから、「自由使用」と言って、原則として誰もが自由に利用することができます — 国土交通省 利根川下流河川事務所
本記事は2026年8月23日時点で公開されている法令・規則・行政資料に基づく情報提供であり、法律の助言ではありません。個別の事案については、都道府県の水産担当課、漁業協同組合、または弁護士にご相談ください。
