「日中は人が多いので、夜に一人で潜りたいんですが、法律的に大丈夫でしょうか」

この記事は、夜の時間帯に素潜りやシュノーケリングをしてよいか迷っている方に向けて書いています。

答えから言います。夜間の素潜りそのものを一律に禁じる、全国共通のルールはありません。 規制には3つの層があります。やす(銛)を使う場合、灯り(火光)で採る場合、県や海域が個別に夜の潜水を禁止している場合です。素手(徒手採捕)だけで魚介類を採らないなら、多くの県で夜間規制は明文化されていません。

持ち帰りは3つです。

  1. やす(銛)は、県によって夜も昼も使えないか、夜だけ除外されます。 千葉・和歌山・兵庫・北海道はやす自体が遊漁者に許可されておらず、神奈川は夜間の使用を明確に除外しています。
  2. 灯り(火光)は、集魚を目的にすると多くの県で規制されます。 足元や海面を照らすだけのライトと、生き物を集める灯りとでは扱いが違います。
  3. 県や海域単位で、夜の潜水そのものを禁止している所もあります。 山口県の日本海側がその一例です。

やすの県別可否は、別の記事にまとめています

やす(銛)を遊漁者が使えるかどうかの県別の一覧は、素潜りで魚突きは違法?にまとめています。ここでは、夜間と灯りの規制だけを上乗せして見ていきます。

県ごとに「やす」「灯り」「夜間」の扱いは違います

関東の千葉・神奈川・静岡、関西の和歌山・兵庫・三重を確認しました。東京・沖縄・北海道と、参考として山口も並べています。

やすの遊漁使用 灯り(火光)の規制 夜間規制 根拠
静岡 可(水中眼鏡併用を除く) は具は火光・水中眼鏡併用を除外 明文なし 漁業調整規則第43条
三重 可(火光利用を除く) やす・は具とも火光利用を除外 明文なし 漁業調整規則第48条
千葉 不可 集魚灯は禁止・足元用ライトは可 明文なし 漁業調整規則第45条+県Q&A
神奈川 可(夜間・水中眼鏡併用を除く) 内水面は火光利用の漁法を原則禁止 あり(日没〜日出) 漁業調整規則第39条・第41条
和歌山 不可 火光利用のやす突漁法を禁止 明文なし 漁業調整規則第38条・第45条
兵庫 不可 各漁法で火光の使用を除外 岩礁威嚇漁法は日没〜日出で禁止 漁業調整規則第36条・第40条
東京 可(やす・は具) 確認できず 明文なし(確認した範囲) 漁業調整規則第40条
沖縄 記載なし 手釣り等は集魚灯・火光を禁止 条文に「夜間」の語なし 水難事故防止条例第2条
北海道 不可 確認できず 明文なし 漁業調整規則第48条・第40条
山口(参考) 確認できず 確認できず 日本海側で夜間の潜水採捕を禁止 水産庁の一覧・海区委員会指示
夜の素潜りに関する規制を県別に分類した一覧。やすの遊漁使用・灯りの規制・夜間規制の明文の有無を10県で整理し、素手だけなら夜間規制が明文化されていない県が多いことを示す。
図: 水産庁・各県漁業調整規則・沖縄県条例からBLUE BREATHが分類(2026年8月23日時点)。空欄は公式資料で確認できなかった項目。

表の「確認できず」は「規制が無い」という意味ではありません。今回調べた範囲で、公式資料に見つけられなかったという意味です。潜る前に、その県の漁協か水産担当課に確認してください。

火光(灯り)とは何を指すのか

「火光」は多くの規則に出てくる言葉ですが、足元を照らすだけのライトまで禁止する趣旨ではありません。千葉県のQ&Aが、この線引きを明確に説明しています。

集魚灯とは、水産動物を効率的に採捕するため、光で集めるものであり、千葉県漁業調整規則により遊漁者は集魚灯を使用して水産動物を採捕することはできません。なお、足元や海面を見やすくするためのライトは使用できます。 — 千葉県水産局「遊漁のルールに関するよくある問合せについて(Q&A)」

つまり、生き物を集める目的の灯りが「火光」です。足元確認用のライトは、この規制の対象外です。三重・和歌山・兵庫の規則も、やすやは具に「火光を利用するものを除く」という同じ形の除外を置いています。

神奈川県は「夜間」を条文で定義しています

今回確認した規則の中で、「夜間」という言葉を条文で定義しているのは神奈川県です。

何人も、日没から日出までの間(以下「夜間」という。)、海面においてみづきにより水産動物を採捕してはならない。 — 神奈川県漁業調整規則 第39条

同規則の第41条は、やす・いそがね(磯で使う採捕の道具)を対象にしています。夜間に使う場合、または水中眼鏡を併用する場合を除くと定めています。つまり神奈川では、夜にやすを使うこと自体が、マスクの有無に関わらず規則の対象になります。

沖縄条例は「潜水」を給気器具に限定しています

沖縄県の水難事故防止条例は、遊泳者の安全確保を目的にした条例です。ただし条文本体13ページのどこにも「夜間」という語は出てきません。条例が定義する「潜水」は、タンクなど水中で給気を受けられる器具を使う行為に限られます。素潜りやシュノーケリングは、この定義に含まれません。夜間の素潜りを直接名指しで禁じている条文ではない、と読むのが条文どおりの理解です。

夜は視界と救助の両方が落ちます

規則をクリアしても、夜の海そのものが昼より不利な条件であることは変わりません。海上保安庁は、マリンレジャーに伴う海浜事故のうち遊泳中が最も多いと説明しています。スノーケリング中の事故者の死亡率は、他の活動と比べても高い状況にあるとしています。時間帯別の内訳は公表されていません。ただし視界が落ちる分、仲間からもあなた自身からも異常への気づきが遅れます。詳しい事故統計は素潜りの事故は年に何件?にまとめています。単独で潜らず、必ず同行者と行動し、安全の原則にも目を通してください。

この記事で確認できなかったこと

  • 東京・長崎など、上の表に含めていない県の夜間規定の全文。
  • 沖縄県条例の版(令和6年度時点の公開データと推定)。
  • 海上保安庁の統計に、夜間と日中を分けた発生割合の内訳は無い。

次の一歩

  1. 自分が潜る県の名前で「◯◯県漁業調整規則」を検索し、やす・火光・夜間の3項目を確認してください。 上の表は出発点で、正本は県のサイトにあります。
  2. やすや灯りを使う予定があるなら、判断がつかない部分は地元の漁業協同組合か県の水産担当課に聞いてください。 「夜に潜っていいか」より「やすと灯りは使えるか」と聞くほうが答えが返ってきやすいです。
  3. 夜に潜るなら、規則の確認とは別に単独行動をやめてください。 視界と救助の両方が落ちる条件は、どの県でも変わりません。

川での素潜りの規則は川で素潜りはしていい?にまとめています。

山口県の日本海では、夜間潜水して水産動植物の採捕することを山口県日本海海区漁業調整委員会指示で禁止している。 — 水産庁「都道府県漁業調整規則で定められている遊漁で使用できる漁具・漁法(海面のみ)」注36

本記事は2026年8月23日時点で公開されている法令・規則・行政資料に基づく情報提供であり、法律の助言ではありません。個別の事案については、都道府県の水産担当課、漁業協同組合、または弁護士にご相談ください。