この記事は、妊娠中に海へ行く予定があり、シュノーケリングやフリーダイビングをしたい方に向けて書いています。答えから言います。公的な資料はどれも、スキューバダイビングを名指ししています。 妊娠中は避けるべき活動として書かれています。フリーダイビングやシュノーケリング単体を扱った公的な指針は、見つかりませんでした。
持ち帰りは3つです。
- スクーバは複数の資料が一致して避けるよう勧めています。 理由は減圧に伴う胎児への影響です。
- フリーダイビングは、DAN JAPANが定義する「ダイビング」に含まれます。 妊娠の注意もこの定義の上に書かれています。
- シュノーケリング単体への公的な言及は見つかりませんでした。 ただし転倒・体温・海況の注意は共通してあてはまります。
一次資料を並べた表
| 活動 | 公式の見解 | 理由(資料に書かれたもの) | 出典 |
|---|---|---|---|
| シュノーケリング(水面) | 名指しした公的資料は見つからず | ― | ― |
| スキンダイビング(浅く短く潜る) | 名指しした公的資料は見つからず | ― | ― |
| フリーダイビング(深く・長く潜る) | DAN JAPANの「ダイビング」に含まれ、妊娠中は勧められない | 減圧に伴う胎児の静脈塞栓(スクーバの機序として書かれたもの) | DAN JAPAN(2021) |
| スクーバダイビング | 妊娠中は避けるべき(3資料が一致) | 減圧症後の胎児奇形・ガス塞栓症のリスク | DAN JAPAN/dan.org/日本臨床スポーツ医学会(2019) |
なぜスクーバだけが名指しされるのか
減圧が理由
日本臨床スポーツ医学会の「妊婦スポーツの安全管理基準(2019)」があります。この基準は、減圧環境を避けるべきだとしています。胎児は減圧の問題から保護されておらず、先天異常やガス塞栓症のリスクがあるとされます。その理由で、妊婦はスキューバダイビングを控えるべきだと書いています。
推奨される運動
同じ資料は、望ましい有酸素運動を8種目挙げています。ウォーキング・水泳・ジョギング・エアロビクスが4つです。ヨガ・ピラティス・ラケットスポーツ・固定自転車が、残りの4つです。その中に、シュノーケリングやフリーダイビングはありません。
DAN本部も、妊娠中はダイビングを避けることを勧めています。ただしスキューバの減圧症を対象にした説明で、フリーダイビングへの言及はありません。
フリーダイビングは対象に入るのか
ダイビングの定義
DAN JAPANの医師向けガイドラインは、冒頭でダイビングを定義しています。スクーバとフリーダイビングを合わせて「ダイビング」と呼んでいます。そのうえで、代謝・内分泌の項に妊娠の注意が書かれています。
妊娠:滅圧の際、胎児に生じる静脈塞栓の影響は、胎児の健康に有害な可能性があることが証明されています。ですから、妊娠のどの段階でもダイビングは勧められません
理由の食い違い
冒頭の定義に従えば、この注意はフリーダイビングにも及ぶと読めます。一方で理由に書かれた減圧に伴う静脈塞栓は、圧縮ガスを吸って浮上する過程の話です。息を止めて潜るフリーダイビング特有の理由は書かれていません。この食い違いは、資料の中で解消されていません。
シュノーケリングは、名指しされていません
沖縄県のスノーケリング業を対象にした条例があります。条文まで確認しましたが、妊娠を名指しした条文は見つかりませんでした。事業者に義務づけているのは、健康状態や経験から安全にできないおそれがある場合は行わせないという一般条項です。判断は事業者の裁量です。水面に浮く範囲のシュノーケリング自体を禁じる公的資料もありません。
シュノーケリングはなぜ溺れる?で書いたとおり、事故の典型は急な息苦しさとパニックから始まります。妊娠中でなくても同じです。水面で浮くだけにする場合も、安全の約束(3つ)は変わりません。体温上昇・転倒・海況急変への注意も、妊娠中の運動全般に共通して挙げられています。
確認できなかったこと
- 息止めによる母体の低酸素が胎児に与える影響を直接検証した一次資料。
- フリーダイビングを個別に扱った公的な妊娠ガイドライン。
- 日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン産科編2017」の原文(他資料からの引用でのみ確認)。
次の一歩
この記事は医師の判断の代わりになりません。まず主治医に相談してください。伝えるのは「水面での軽い運動」か「息を止めて潜る運動」かです。息止めの平均は年齢で変わる?で書いたとおり、息止めの秒数は年齢では決まりません。判断は年齢ではなく、妊娠の経過と主治医の言葉に委ねてください。
