「息を止める練習をすればするほど、肺年齢も若返るんでしょうか」

この記事は、息止めの練習と肺年齢の関係が気になっている方に向けて書いています。

答えから言います。分かりません。 肺年齢は日本呼吸器学会(呼吸器専門医の学会)が1秒量だけから計算する指標で、学会のステートメント原文に息止めの語は出てきません。

持ち帰りは3つです。

  1. 肺年齢の計算式に、息止めは登場しません。 使われるのは1秒量(思い切り吐いた最初の1秒間の空気量)だけです
  2. 息止め時間と相関があるのは、肺活量です。 エリート素潜りダイバーの研究で、肺活量が多い人ほど競技の記録が高い傾向が確認されています
  3. 吸う量を減らして潜ると、息止めは短くなります。 肺の6割まで吸った状態で潜った実験が、いちばん短い結果でした

肺年齢は、どうやって計算しているんですか

日本呼吸器学会は、肺年齢という指標を2006年度から2007年度にかけて作りました。狙いは、慢性閉塞性肺疾患(COPD、タバコなどで気道が狭くなる病気)を早く見つけてもらうことです。

計算のもとになるのは1秒量(FEV1、思い切り吐いた最初の1秒間の空気量)だけです。性別と身長を使った式に1秒量の実測値を入れ、逆算された年齢を肺年齢として実年齢と比べます。

測定にはスパイロメトリーという検査を使います。機械に向かって思い切り息を吐く検査で、息を止める時間はこの検査に含まれません。

学会のステートメントに、息止めの語は出てきません

学会が公表しているステートメントの原文を確認しました。肺年齢の目的と算出方法の説明はありますが、「息止め」も英語の「apnea」も出てきません。肺年齢は、肺活量でも息止め時間でもなく、1秒量だけを見る指標です。

息止めと関係があるのは、どの数値ですか

肺年齢・肺活量・全肺気量・息止め時間の4つを、何を測っているかで整理しました。

用語 何を測るか 測り方 息止め時間との関係
肺活量(VC) 最大まで吸ってから、最大まで吐き切った空気の量 スパイロメトリー 相関あり(r=0.54、高得点群7.9L・低得点群6.7L)
全肺気量(TLC) 肺活量に、吐き切っても肺に残る空気の量(残気量)を足した量 ボディプレチスモグラフィ等の専用検査 確認できず(相関を検証した文献が見つかりませんでした)
肺年齢 1秒量を身長・性別の式に入れて逆算した年齢 スパイロメトリー 確認できず(学会の定義に息止めの語がありません)
息止め時間 随意に止められる時間 ストップウォッチ この表の比較対象

空欄にせず「確認できず」と書いた項目は、今回調べた範囲で相関を検証した文献が見つからなかったという意味です。研究が無いことと、関係が無いことは違います。

エリート素潜りダイバー14人を競技成績で高得点群・低得点群に分け、肺活量を比較した棒グラフ。高得点群7.9リットル、低得点群6.7リットルで、肺活量の差から息止め時間はおよそ60秒伸びると推定されています。
図: Schagatay 2012からBLUE BREATHが分類(2026年8月23日時点)。

肺活量が多い人ほど、息止めは長い傾向があります

エリート素潜りダイバー14人を対象にした研究では、競技成績と肺活量の間にr=0.54の相関が見つかりました。競技成績が高い群の肺活量は7.9リットル、低い群は6.7リットルでした。この差から、息止め時間はおよそ60秒分伸びると推定されています。

肺年齢の計算に使う1秒量と、息止めに関係する肺活量は、同じスパイロメトリーの検査で測りますが別の数値です。近い検査で測るからといって、同じことを表しているわけではありません。

吸い方でも、息止め時間は変わりますか

変わります。同じ人が、肺活量の60%・85%・100%まで吸った状態で潜る実験をした研究があります。

肺の6割まで吸って潜ると、いちばん短くなりました

結果は、60%まで吸った状態がもっとも短い息止め時間になりました。吸う量が少ないほど短くなった、という結果です。

肺活量そのものを増やすトレーニングと、潜る直前にどこまで吸うかは別の話です。どちらも息止め時間に影響しますが、混同しないでください。

SpO2が下がる速さの研究と、肺年齢は同じですか

違います。息止め中のSpO2(血中酸素飽和度、血液中の酸素の割合)が下がる速さを調べた研究がありますが、これは肺年齢とは別の測定です。

年齢との相関は見つからなかった研究です

健康な人を対象にしたその研究では、SpO2が下がる速さと年齢の間に、統計的に意味のある相関は見つかりませんでした。肺年齢の計算式は年齢を使いますが、この研究が調べているのは年齢そのものではなく、息止め中の酸素の下がり方です。指標の目的が違うので、混同しないでください。

年齢と息止め時間の関係は息止めの平均は年齢で変わる?に、平均的な時間は息止めの平均は何分?にまとめています。記録として認定された時間は息止めのギネス記録は29分にあります。安全に関わる注意は安全の原則にまとめています。

この記事で確認できなかったこと

  • 1秒量と息止め時間の相関を直接調べた論文(見つかりませんでした)
  • 全肺気量と息止め時間の相関係数
  • 「息止めで肺年齢が分かる」という説を、名指しで否定した学会の文書

次の一歩

  1. 肺年齢が気になる方は、呼吸器内科でスパイロメトリー検査を受けてください。 息止めの自己流テストは代わりになりません
  2. 息止め時間の今の自分の数字を、まず測ってください。 この記事のタイマーで計測できます
  3. 息止めの練習の進め方は、専門の記事で確認してください。 息止めは何秒できればいい?にまとめています

具体的には、性別に基づき身長と1秒量の実測値を計算式に代入し、逆算された年齢を「肺年齢」として実年齢と比較する手法である。 — 日本呼吸器学会「肺年齢に関するステートメント」

本記事は2026年8月23日時点で公開されている学会資料・論文に基づく情報提供であり、医学的な助言ではありません。呼吸器の症状や検査結果については、呼吸器内科にご相談ください。