「素潜りの帰りに、浜辺できれいな貝殻と流木を拾いました。持ち帰っても大丈夫でしょうか」

この記事は、海岸で貝殻や流木、砂を見つけて持ち帰っていいか迷っている方に向けて書いています。

答えから言います。物ごとに法律が違います。 対象が貝殻か流木か砂かで、根拠になる法律が変わります。許される範囲も変わります。

持ち帰りは3つです。

  1. 打ち上げられた貝や海藻でも、漁業権の対象区域なら採ると違反です。 漁業権は海の中だけでなく、最高潮時海岸線(満潮時に水面が届く線)まで及びます
  2. 砂や石は海岸法の許可制で、流木は民法上「拾った人のもの」になるのが原則です。 ただし国立公園の特別地域では扱いが変わります
  3. 沖縄のサンゴは死骸でも原形が残っていれば採捕禁止です。 空の貝殻とシーグラス(角の取れたガラス片)は、明文で答えている一次資料が見つかっていません

貝殻や海藻を拾うと、漁業権の侵害になりますか

貝や海藻の多くも「共同漁業権」(漁協が岸の浅場で特定の生き物を採る権利)の対象種です。タコやサザエと同じ仕組みです。共同漁業権の仕組みとアワビの話は素潜りでサザエ・アワビは違法?にまとめています。ここでは「拾う」という行為に絞ります。

「採捕」は、拾って動かした時点で成立します

神奈川県の遊漁Q&Aは、採捕の定義をこう説明しています。

「採捕」とは、自然の状態にある水産動植物を人の支配下に移す行為をいいます。支配下に移す行為であれば十分で、水産動植物を必ずしも所持する必要はありません。 — 神奈川県「遊漁のルールに関するよくある質問」問1

ポケットに入れなくても、手に取って自分の支配下に置いた時点で採捕になり得るという意味です。同じQ&Aは、海岸に打ち上げられたワカメを拾う例も挙げています。漁業権の対象区域なら「採捕しないでください」と明記しています。打ち上げ海藻の詳しい扱いは素潜りで海藻は違法?にまとめています。

漁業権は、海の中だけの話ではないのですか

漁業権は「海に潜って採る話」と思いがちです。神奈川県のQ&Aは、共同漁業権の及ぶ範囲を「最高潮時海岸線まで」としています。満潮時に海水が届く線までが対象区域という意味です。海に入らず、砂浜の上で拾うだけでも、この範囲に入っていれば違反になり得ます。

物によって、根拠になる法律が違います

浜で見つけやすいものを、根拠法と原則で整理しました。

根拠法 原則 注意
生きた貝・打ち上げの貝や海藻(対象種) 漁業法・共同漁業権 不可(対象区域内) 漁業権が無い区域・対象外種は県規則の範囲で採れる余地
空の貝殻 明文なし 確認できず サンゴの解釈から類推するとリスクが残る
砂・石 海岸法第8条 許可制(無許可は1年以下/50万円以下) 海岸保全区域内が対象
流木 民法第239条 原則可(無主物先占) 国立公園の特別地域は自然公園法の許可制
サンゴのかけら(原形あり・死骸含む) 沖縄県漁業調整規則 不可 沖縄県内が対象
サンゴのかけら(原形なし) 海岸法(土石扱い) 許可制 海岸管理者へ要照会
シーグラス 明文なし 確認できず
海岸で拾いやすい7品目を、根拠法と持ち帰りの可否で分類した一覧。貝・海藻・砂・サンゴのかけらは許可制または不可、流木は原則可、空の貝殻とシーグラスは確認できず。
図: 漁業法・海岸法・民法・沖縄県公式ページからBLUE BREATHが分類(2026年8月23日時点)。空欄は公式資料で確認できなかった項目。

「確認できず」は規則が無いという意味ではありません。今回調べた範囲で公式資料に見つけられなかったという意味です。持ち帰る前に、地元の漁協か海岸管理者に確認してください。

砂や石、流木は拾ってもいいですか

砂・石は海岸法の許可制です

海岸保全区域内での土石(砂を含む)の採取は、海岸法第8条により海岸管理者の許可が必要です。無許可で採ると同法第41条により1年以下の拘禁刑(刑務所での拘束を伴う刑罰)または50万円以下の罰金です。沖縄県公式ページも「海岸の砂浜はそのほとんどが国有海浜地」としています。土石類の採取は海岸管理者の許可が必要です。

流木は「無主物先占」で、拾った人のものになるのが原則です

民法第239条は「所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する」と定めています。海に流れ着いた木は所有者が分からないため、この規定にあたると考えられ、拾った人のものになるのが原則です。

ただし国立公園の特別地域では、自然公園法第20条により土石の採取などが許可制です。木そのものを名指しした条文ではありませんが、区域によっては扱いが変わる可能性があります。天然記念物に指定された石は文化財保護法の対象です(例えば根室市の「根室車石」)。これは流木とはまったく別の話です。

沖縄でサンゴのかけらを拾ったら、罪になりますか

沖縄県公式ページは、造礁サンゴ(暖かい海でサンゴ礁を作るサンゴ)の採捕を説明しています。原形をとどめているものは、死骸も含めて禁止です。砂状やれき状になって原形が分からないかけらは土石として扱われ、海岸法の対象です。同じ沖縄県ページは、この場合の利用について海岸管理者に問い合わせるよう案内しています。

空の貝殻やシーグラスは、持ち帰っていいですか

正直に言うと、明文で答えている一次資料が見つかっていません。生きた貝や打ち上げの貝・海藻には漁業権の規定があります。中身のない貝殻を対象外と述べた条文や県の案内は確認できませんでした。沖縄県のサンゴの解釈は、原形が残っていれば死骸も禁止というものです。貝殻にも同じ考え方が及ぶ可能性が残ります。シーグラスについても、扱いを定めた一次資料は見つかっていません。

この記事で確認できなかったこと

  • 空の貝殻を対象外と明言した一次資料
  • 海岸法の許可が不要になる場合の具体的な条件
  • シーグラスの扱いを定めた法令・条例

次の一歩

  1. 拾う前に、その浜が共同漁業権の区域かどうかを地元の漁協か県の水産担当課に確認してください。 貝殻・海藻ともに、対象区域内かどうかで結論が変わります
  2. 砂・石をまとまった量で持ち帰りたい場合は、海岸管理者(都道府県や市町村)に許可の要否を問い合わせてください。 少量なら例外になるという規定は、今回確認できていません
  3. 沖縄でサンゴのかけらを見つけても拾わず、判断に迷ったら現地の水産担当課に照会してください。 原形の有無を自分で判断するのはリスクがあります

タコやサザエの持ち帰りは素潜りでサザエ・アワビは違法?にまとめています。罰則の一覧は密漁の罰則一覧にあります。潜る前の共通の注意は安全の原則にまとめています。

折れて海域に落ちているもので(生死は問いません。)、原形をとどめているもの(砂状、れき状、石状等の死サンゴは、除きます。)も採捕禁止です。 — 沖縄県「造礁サンゴの採捕について」

本記事は2026年8月23日時点で公開されている法令・規則・行政資料に基づく情報提供であり、法律の助言ではありません。個別の事案については、都道府県の水産担当課、漁業協同組合、または弁護士にご相談ください。