「磯で見つけたワカメを、家に持ち帰って味噌汁にしました。これって違法なんでしょうか」
この記事は、磯や海岸でワカメ・ひじきなどの海藻を見つけて採っていいか迷っている方に向けて書いています。
答えから言います。海藻は漁業法60条5項1号に「藻類」と法律本文で直接書かれています。多くの漁場で第一種共同漁業権(漁協が浅場で貝や海藻を採る権利)の対象です。 どの海藻が対象かは、海域ごとの免許の内容で決まります。
持ち帰りは3つです。
- 海藻はウニ・ナマコと違い、告示ではなく法律本文で対象になります。 個別指定の告示を待たず、「藻類」という言葉自体が対象です
- どの海藻が対象かは、漁場ごとの免許内容で決まります。 千葉・静岡・神奈川・東京・沖縄の公式資料で、ワカメやヒジキを確認しました
- 打ち上げられたワカメも、神奈川県は「採るな」としています。 満潮時の海岸線までが共同漁業権の範囲だからです
共同漁業権の一般的な仕組みは、他の記事に譲ります
共同漁業権がどんな権利で、なぜ岸のほぼ全域にかかっているのかは、素潜りでサザエ・アワビは違法?で説明しています。ここでは海藻に絞って、対象になる根拠と県ごとの違いを見ていきます。対象の海藻を組合員以外が採ると漁業権侵害になり、漁業法第197条により100万円以下の罰金です。漁協などの告訴がなければ起訴されない親告罪です。
県によって対象の海藻は違います
関東の千葉・神奈川・静岡、東京、沖縄で、公式資料から対象の海藻を確認しました。
| 県 | 対象海藻(原文の一部) | 確認 |
|---|---|---|
| 千葉 | オゴノリ・カジメ・テングサ・ワカメ・ヒジキ等15種 | 原文 |
| 静岡 | 免許ごとに、わかめ・ひじき・てんぐさ・かじめ・もずく等 | 原文 |
| 神奈川 | わかめ・ひじき・はばのり・てんぐさ等(免許ごとに対象を表示) | 原文 |
| 東京(新島・式根島) | てんぐさ・いわのり・はばのり・とさかのり・ひじき | 原文 |
| 沖縄 | ヒトエグサ・もずく・ヒジキ(地域によりほんだわら類等も対象) | 原文 |
| 兵庫 | 個別リストは画像PDFで抽出できず | 確認できず |
| 和歌山 | 個別リストは画像PDFで抽出できず | 確認できず |
| 三重・北海道・岩手 | ー | 確認できず |
「確認できず」は規則が無いという意味ではなく、今回調べた範囲で公式資料に見つけられなかったという意味です。潜る前に、その県の漁協か水産担当課に確認してください。
海藻は、ウニ・ナマコと対象になる根拠が違います
ウニ・ナマコなど定着性の水産動物は、農林省告示第51号で15種が個別に指定されています。一方で海藻は、漁業法60条5項1号の条文自体に「藻類」と書かれており、告示による追加指定を必要としません。根拠の場所が条文か告示かの違いだけで、対象になりうる結果は同じです。
打ち上げられたワカメも、採っていいですか
神奈川県の遊漁Q&Aは、この問いに直接答えています。
問9 海岸に漂着している「ワカメ」を採捕してもよいですか? 答:共同漁業権の及ぶ範囲は、最高潮時海岸線(満潮で最も水面が満ちてくる海岸線)までとなります。そのため、共同漁業権が設定されており、「ワカメ」が共同漁業権の対象となっている海面においては、遊漁者が海岸に打ち上げられた「ワカメ」を採捕した場合、漁業権侵害罪に問われることがありますので、採捕しないでください — 神奈川県「遊漁に関するよくある質問(Q&A)」問9
海の中で採るか、岸に上がったものを拾うかは関係ありません。線引きは「その漁場でワカメが対象種かどうか」だけです。
制度と現地の食い違い ー 沖縄の資料の条番号
沖縄県の遊漁ルールPDFは、侵害の罰則を「漁業法第195条」と説明しています。しかし現行の漁業法で漁業権侵害の罰則を定めるのは197条です。
漁業法は令和2年12月の改正で条番号が大きく振り直されました。県の資料にある「195条」は、改正前の旧番号がそのまま残っている可能性があります。制度の現行条文と、現地の資料の番号がずれている一例です。県への確認はしていないため、断定はできません。
合法に採りたいなら、地域の体験を探してください
漁協が主催すると明記された体験は、今回見つけられませんでした。見つけた例を1つ挙げます。横浜・八景島シーパラダイスは2026年3月1日から31日まで「ワカメ収穫体験」を開き、1組2,500円(4名まで・入館券別)でした。主催は観光施設であって漁協ではありません。参加条件や次回の開催は主催者に直接問い合わせるのが確実です。
この記事で確認できなかったこと
- 兵庫・和歌山の海藻の個別リスト(画像PDFで抽出できず)
- 三重・北海道・岩手の対象海藻(公式資料の原文に到達できず)
- 沖縄PDFの「195条」が旧番号のままである理由(県に確認していません)
次の一歩
- 自分が潜る県の名前で「◯◯県 共同漁業権 対象種」を検索し、海藻が対象か確認してください。 上の表は出発点で、正本は県のサイトにあります
- 判断がつかなければ、地元の漁業協同組合か県の水産担当課に聞いてください。 岸で拾ったか海中で採ったかではなく、聞くのは「対象種かどうか」です
- 合法に採ってみたいなら、自治体や観光施設が開くワカメ収穫体験を探してください。 八景島シーパラダイスはその一例です
タコなど動物の採捕については素潜りでタコを採ったら違法?、告示で指定される種の例は素潜りでウニを採ったら違法?にまとめています。潜る前の共通の注意は安全の原則にあります。
本記事は2026年8月23日時点で公開されている法令・規則・行政資料に基づく情報提供であり、法律の助言ではありません。個別の事案については、都道府県の水産担当課、漁業協同組合、または弁護士にご相談ください。
