「ツアーで渡された『スノーケリングベスト』は、ライフジャケットと同じものですか」
この記事は、沖縄のツアーで渡されるベストが何なのか気になる方に向けて書いています。答えから言います。別物です。分けるのは浮力の数字ではなく、国土交通省が型式承認した「桜マーク」の有無です。桜マーク付きライフジャケットには4つの型式があり、浮力は7.5kg以上か5.85kg以上です。マーク無しのスノーケリングベストは、浮力がメーカー自身の表示だけです。
沖縄県の水上安全条例(正式名称: 水難事故の防止及び遊泳者等の安全の確保等に関する条例)は「救命胴衣」の着用を業者に義務づけています。ただしどちらの装備を指すかは、条文を読んでも分かりませんでした。
ライフジャケットには4つの型式があります
国土交通省のページによると、桜マーク付きのライフジャケットにはTYPE A・D・F・Gの4型式があります。TYPE A・D・Fは成人で浮力7.5kg以上です。小児用は体重に応じて4〜7.5kgです。違いは色・反射材・笛の有無に加えて、搭載できる船舶の条件も型式ごとに違います。TYPE Aは全ての小型船舶に法定備品として搭載できますが、TYPE D・Fは限定された航行区域や、不沈性能などの条件を備えた船に対象が絞られます。
TYPE Gだけは別の区分です
TYPE Gは「小型船舶用浮力補助具」という別の区分です。浮力は5.85kg以上で、小児用の設定はありません。泳ぎを補助する程度の、軽い浮力補助具という位置づけです。
浮力の基準はさらに細かく決まっています
別ページの安全基準には、浮力の基準値がもっと細かく書かれています。成人は7.5kg以上、体重40kg未満の小児は5kg以上、体重15kg未満の小児は4.0kg以上です。口で膨らませる呼気併用式は、未充気の状態で6kg以上が条件です。どの型式も「顔面を水面上に支持できること」が求められます。
型式ごとの浮力と、条例に当たるかの一覧
| 型式 | 浮力(kgf) | 何に使うものか | 沖縄条例の「救命胴衣」に当たるか |
|---|---|---|---|
| TYPE A(桜マーク) | 7.5kg以上(小児4〜7.5kg) | 全ての小型船舶に法定備品として搭載できる | 条文に型式の指定なし・確認できず |
| TYPE D(桜マーク) | 同上 | 限定区域を航行する小型船舶(旅客船除く) | 同上 |
| TYPE F(桜マーク) | 同上 | 不沈性能などを備えた条件付きの小型船舶 | 同上 |
| TYPE G(桜マーク) | 5.85kg以上(小児用なし) | 小型船舶用浮力補助具。泳ぎを補助する程度 | 同上 |
| スノーケリングベスト(マーク無し) | メーカー表示のみ(例: 5.8〜12.2kg) | 浮力を補助する製品。国の型式承認は受けていない | 同上 |
同じ「7.5kg」のTYPE Fでも、成人用として使えます。一方でマーク無しのベストは、XS-Sサイズで5.8kgとTYPE Gより軽い場合があります。数字はサイズと商品によって動きます。
スノーケリングベストは、この4つのどれでもありません
TUSA SPORTのエアージャケットUA0404という製品を、商品ページで確認しました。サイズ別の浮力はXS-S 5.8kg・M-L 7.2kg・XL 12.2kgと書かれていました。桜マークや国土交通省承認への言及は、どこにもありませんでした。
つまりツアーで渡される「スノーケリングベスト」は、国が浮力の下限を保証した製品ではありません。メーカーが自分で測って表示した浮力補助具です。7.2kgという数字はTYPE A・D・Fの基準に近いものの、型式承認品ではないので、国の基準を満たしていると言い切ることはできません。
沖縄条例の「救命胴衣」に当たるかは、条文からは分かりません
水上安全条例の第23条は、スノーケリング業者に「スノーケリング者に救命胴衣又はウエットスーツを着用させること」を義務づけています。条文を読む限り、TYPE A・D・F・Gのどれを指すかという指定は書かれていません。桜マークが必要かも書かれていません。
条例に注釈が無い箇所です
同じ条例には「特定カヌー等とは、カヌー、カヤック、SUPの3種をいう」のように、用語を注釈で定義している箇所があります。ところが「救命胴衣」には、そうした注釈が見当たりませんでした。公安委員会規則(条例の細かい運用を定める警察の規則)で別に定められている可能性はありますが、今回確認できたのは条例の本文と事業者向け改正概要までです。
だから、この記事では断定しません。「TYPE Gなら条例上OK」も「マーク無しのベストはNG」も言いません。ツアー業者が用意するものであれば、業者側の義務の範囲で判断される話です。自分で選んで持ち込む場合に何を選ぶべきかは、確認できた条文の中に答えがありませんでした。
この記事で確認できなかったこと
- 沖縄県公安委員会規則における「救命胴衣」の型式指定の有無
- スノーケリングベストの浮力表示が準拠する業界規格(JIS・ISO等)の有無
次の一歩
自分で選ぶなら、まず商品ページで浮力の表示と桜マークの有無を確認してください。浮力の下限に国の保証が欲しいときは、桜マーク付きのTYPE AかTYPE Gを選んでください。ツアーに参加するなら、業者が渡すもので義務は満たされます。海で守ることはこの3つだけです。持ち物を選ぶ前に、そちらも読んでおいてください。泳ぎに自信が無い方向けの選び方は非遊泳者向けの記事、沖縄のツアー会社の選び方はツアーの選び方にまとめています。
