「耳抜きって結局何をしているの? 飛行機の耳抜きと同じ?」
この記事は、耳抜きの意味を分からないまま我流で潜っている方に向けて書いています。答えから言います。耳抜きとは、水中で強くなる水圧に合わせて、中耳(鼓膜の内側にある小さな空間)の圧を上げる動作です。飛行機で耳がツンとするのも同じ仕組みで、圧の向きが逆になっているだけです。
持ち帰りは3つです。
- 耳抜きは、耳の外と中の圧の差をゼロに戻す動作です
- 水中は水深10mで1気圧増え、2mでも0.2気圧変わります
- 飛行機の着陸時の圧変化は0.2〜0.25気圧で、水深2m分とほぼ同じです
耳抜きとは、中耳の圧を外と合わせる動作
耳は、外耳・中耳(鼓膜より内側の空間)・内耳の3つに分かれています。中耳は、鼻の奥の上咽頭(のどの上、鼻の裏側)と耳管(じかん)という管でつながっています。
耳管は普段閉じていますが、唾を飲んだりあくびをしたりすると開きます。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、耳管の役割をこう説明しています。「開閉することにより鼓膜の内外の気圧を調整する働きをしている」という説明です。耳抜きとは、この耳管を自分の意思で開く動作です。開いた耳管から中耳に空気を送り込みます。
あくびで抜ける理由
あくびで耳が抜けるのは偶然ではありません。あくびは、耳管を開く筋肉(口蓋帆張筋という、上あごの奥の筋肉)を動かす動作のひとつだからです。唾を飲む動作も同じ筋肉を使います。耳が詰まったら、まず唾を飲むかあくびをするのが最初の対処になります。
なぜ潜ると耳抜きが必要になるのか
水中では、深くなるほど水圧が増えます。海洋研究開発機構(JAMSTEC)は「海中を10m潜ると約1気圧上昇する」と説明しています。水面を1気圧とすると、水深10mは2気圧、地上の2倍の圧力です。
中耳の中の空気は、外の水圧に押されて縮もうとします。耳管が開いていなければ、鼓膜が中耳側にへこみ、痛みや圧迫感が出ます。耳抜きは、耳管を開いて中耳に空気を足し、この縮みを打ち消す動作です。
場面ごとの圧力差を表にしました。
| 場面 | 気圧差(地上比) | 体が感じること | 主な方法 |
|---|---|---|---|
| 飛行機の着陸(787型機) | 約0.2気圧 | 耳の詰まり感 | 唾を飲む・あくび |
| 水深1m | 約0.1気圧 | ほぼ無自覚 | 潜降しながら軽く抜く |
| 水深2m | 約0.2気圧 | 詰まり感が出始める | 唾を飲む・あくび、抜けなければバルサルバ(鼻をつまんで息む) |
| 水深5m | 約0.5気圧 | 圧迫感がはっきり出る | バルサルバまたはフレンツェル(舌で空気を送る) |
| 水深10m | 1.0気圧 | 抜けないと強い痛み | フレンツェル(深いほど有利) |
水深2mで、飛行機1回分の圧がかかる
ここが一番伝えたい数字です。水深2mでかかる圧力差は約0.2気圧で、飛行機の着陸時に客室の気圧が変わる幅(0.2〜0.25気圧)とほぼ同じです。つまり、顔を2mだけ沈めた瞬間、耳には飛行機の着陸1回分と同じ圧がかかっています。「浅いから抜かなくていい」は成立しません。
飛行機の耳抜きと、潜る耳抜きの違い
ANA(全日空)によると、従来機の客室気圧は「標高2,400mと同じ」です。最新の787型機は「標高1,800mの山頂と同程度」まで下げられています。地上を1気圧とすると、客室の気圧はその0.75〜0.80気圧しかありません。財団法人航空医学研究センターの資料でも、高度8,000フィート(約2,400m)は0.75気圧とされています。この高度で、耳管通気(耳抜き)の訓練が行われると記載されています。
離陸して上昇するときは客室の気圧が下がるので、中耳の空気が膨らむ向きです。これは苦しくなりにくく、あくびで自然に抜けます。着陸で高度が下がるときは、客室の気圧が地上に向けて上がるので、中耳に空気を足す向きになります。これが潜水の耳抜きと同じ向きで、耳がツンと痛むのはこのタイミングです。
違うのは向きではなく圧の大きさです。飛行機は着陸の間に0.2〜0.25気圧しか変わりませんが、水中は10mごとに1気圧です。同じ「耳抜き」でも、潜水では飛行機よりずっと速く、大きく圧が変わります。
方法の名前を知っておく
耳抜きの方法には主に4つあります。唾を飲む・あくびをする(耳管を開く自然な動作)、バルサルバ法(鼻をつまんで息む)、フレンツェル法(舌で空気を送る)です。浅い場所は唾を飲むかあくびで足ります。深くなるとバルサルバは肺の空気が足りなくなり、フレンツェル法が必要になります。
やり方の手順は耳抜きができないとき、最初に変えるのはやり方にまとめています。家でできる練習は耳抜きの練習は家でどこまでできる?に書いています。
この記事で確認できなかったこと
- 飛行機の客室気圧を定めた日本の法令(耐空性審査要領)の具体的な数値条文
- あくびと嚥下、それぞれが耳管を開く力の大きさを比較したデータ
次の一歩
耳抜きが何をしているかが分かったら、次はやり方です。まずは陸で、唾を飲んで耳が「パチッ」と鳴るかを確かめることから始めてください。うまく抜けない方、片耳だけ抜けない方は、耳抜きができないとき、最初に変えるのはやり方へ進んでください。潜る前の共通の注意は安全の原則にまとめています。
