「シュノーケリングのライフジャケットって、着けないと違法なのですか」
この記事は、そう調べている方に向けて書きました。答えから言います。泳ぐ人に着用を義務づける法令は、国にも都道府県にも見つけられませんでした。義務があるのは業者の側で、沖縄県は2026年4月から、業者が客に着せることが義務になっています。
だから、ツアーなら着せてもらえます。自分たちで入るときは、誰にも義務がかかりません。着けるかどうかを決めるのは、自分です。
持ち帰りは3つです。
- ツアーに参加するなら、ライフジャケットは向こうから出てきます。 沖縄では業者の義務です
- 自分たちで入るなら、義務は誰にもありません。 代わりに87%という数字があります
- 海保の定義では、ライフジャケットは「4点セット」の1つです。 着けていない状態をスノーケリングと呼んでいません
国の義務は「小型船舶の乗船者」だけです
ライフジャケットの着用義務で国が決めているのは、船の上の話です。国土交通省のページにこう書いてあります。
国土交通省では関係法令を改正し、平成30年2月からすべての小型船舶の乗船者にライフジャケットの着用を義務化しました。
つまりツアーの船に乗っているあいだは義務で、海に入ったら法令上の義務は無くなります。泳ぐ人を対象にした国の規定は、今回調べた範囲では見つけられませんでした。
沖縄は、業者が客に着せる義務です
沖縄県の条例は、2026年4月1日施行の改正で、スノーケリング業者の義務を書き換えました。改正後の第23条にこうあります。
スノーケリング者に救命胴衣等を着用させること。ただし、スノーケルによる呼吸を行うことができない水深における遊泳を伴うスノーケリングであって、救命胴衣等を着用することにより当該スノーケリングが困難になる場合において公安委員会規則で定める措置をとるときは、この限りでない。
「救命胴衣等」とは、ライフジャケットまたはウエットスーツのことです(第19条の定義)。主語は業者です。客に「着ろ」ではなく、業者に「着せろ」です。例外は、潜る場合だけ。ツアーに申し込めば、着けるものは向こうが用意します。
同じ条例で、プレジャーボート業者にも「利用者に救命胴衣又はウエットスーツを着用させること」、カヌー業者にも「利用者に救命胴衣を着用させること」があります。一方で潜水業者の義務の一覧には、救命胴衣の項目がありません。スノーケリングにだけ書かれています。
自分たちで入るときは、誰にも義務がありません
この条例は業者を縛るものなので、自分たちで浜から入るシュノーケリングには、誰の義務も発生しません。条例がある沖縄でも同じです。
他の県は、対象が違います
和歌山県の条例にも救命胴衣の規定がありますが、対象が違います。
第18条は、ゴムボート・水上スキー・パラセールなどに人を乗せて船で引く人に「その者に救命胴衣を着用させる」ことと、見張り要員の配置を求めています。船で引かれる人の話で、シュノーケリングの人は対象になっていません。静岡県・神奈川県・高知県などで、スノーケリングの人にライフジャケットを求める条例は見つけられませんでした。
あるのは義務ではなく貸出です。逗子市は海水浴場で子ども用ライフジャケットを「無料貸出(約130着)」、南紀白浜観光協会は白良浜など3つの海水浴場で、寄贈されたライフジャケットを貸し出しています。
肝付町(鹿児島県)は、釣りをする個人に義務を課しています
鹿児島県肝付町は2024年9月、定例議会で「ライフジャケット着用条例」(きもつきちょう・鹿児島県大隅半島の町)を制定しました。町の公式広報によると、令和6年中に町内で釣り中の海中転落事故が5件起き、着けていなかった3人が死亡し、着けていた2人は助かっています。事故はすべて「釣り中」で、シュノーケリングは含まれていません。
これまでの沖縄県・和歌山県は「業者が客に着せる」義務でした。肝付町は業者ではなく、釣りをする個人に義務を課しています。町議会によれば、個人に義務を課す条例は全国初です。ただし条文の原文には今回も到達できず、罰則の有無は確認できていません。対象はあくまで釣りで、シュノーケリングをする人には適用されません。
| 自治体 | 対象(業者・個人) | 対象活動 | 罰則 |
|---|---|---|---|
| 国(国土交通省) | 個人(小型船舶の乗船者) | 船に乗ること | 違反点数(船長) |
| 沖縄県 | 業者 | スノーケリング等で客に着用させる | 未確認 |
| 和歌山県 | 業者 | 水上スキー・パラセールなどで人を引く | 未確認 |
| 肝付町(鹿児島県) | 個人 | 釣り(シュノーケリングは対象外) | 未確認 |
| 逗子市・南紀白浜 | 個人(貸出・義務ではない) | 海水浴場での遊泳 | ― |
海保の定義では、着けて初めてシュノーケリングです
義務が無いのに、なぜ各地が貸し出すのか。海上保安庁の「ウォーターセーフティガイド」(海の安全の手引き)は、スノーケリングをこう定義しています。
スノーケリングとは、水中マスク、スノーケル、フィン及びライフジャケット等の浮力体(4点セット)を身に付け、水面での浮力を十分に確保しつつ、水面上を漂うように移動し、口にくわえたスノーケル(パイプ状の呼吸管)を通して常に呼吸活動を継続しながら、水面から水中の様子を観察する活動を言います。
ライフジャケットは装備の一つではなく、定義の中に入っています。同じガイドは、動けなくなったときは「ライフジャケットに付いている笛を吹いて、周囲に知らせましょう」と続けます。笛もライフジャケットに付いている前提です。
数字もあります。第十一管区海上保安本部の資料では、沖縄で過去5年間に起きたスノーケリング中と遊泳中の事故者238人のうち、着けていなかった人は194人(82%)。死者・行方不明者82人では71人(87%)でした。義務の有無で分かれていません。着けていたかどうかで分かれています。
この記事で確認できなかったこと
- 石垣市・宮古島市・竹富町の観光関連条例に、ライフジャケットの規定があるか
- 東京都の伊豆諸島の村の条例
- 肝付町の条例原文(例規集・罰則条項)。町公式広報で制定の事実と事故データは確認できましたが、条文そのものには今回も到達できませんでした
次の一歩
ツアーなら、ライフジャケットの心配は要りません。自分たちで入るなら、海水浴場の監視所で貸出があるかを先に聞いてください。無ければ、買って持って行ってください。シュノーケリングの持ち物に、海保の4点セットの考え方で持ち物を並べています。
なぜ着けていない人が溺れるのかは、シュノーケリングはなぜ溺れる?に事故の順番で書きました。
