「魚にパンくずをあげたら、みるみる集まってきて子どもが大喜びでした。これって大丈夫なんでしょうか」
この記事は、シュノーケリング中に魚へ餌をやってもいいか気になっている方に向けて書いています。
答えから言います。魚への餌やりを禁じる法律は、今のところありません。 自然公園法第37条第1項第3号(国立公園などでの禁止行為を定めた条文)は野生動物への餌やりを規制しています。ただし条文の対象は「鳥類又は哺乳類に属するものに限る」と明記されており、魚類は含まれません。
持ち帰りは3つです。
- 自然公園法の餌やり規制は、鳥と哺乳類だけが対象です。 魚への適用は条文上ありません。
- 環境省のマナーページは、魚を含めて幅広く自粛を呼びかけています。 法律の線と現地の呼びかけの線はずれています。
- まき餌釣という漁法の規制と、観賞目的の餌やりは別のカテゴリーです。 混同しないでください。
「魚に餌をやったら違法」なんですか?
いいえ、条文を読む限りそうは言えません。餌やりを規制しているのは自然公園法第37条第1項第3号です。政令(施行令第6条)もこの条文の定義をそのまま引用しています。
海域公園地区の許可制(第22条第3項第2号)の対象は、捕獲・殺傷・採取・損傷です。餌を与える行為はここにも列挙されていません。
第37条が守るのは鳥と哺乳類だけです
条文のカッコ書きがすべてです。対象を「鳥類又は哺乳類に属するものに限る」と限定しているため、魚類はこの規制の外にいます。2021年の法改正で餌付け規制が追加された経緯はあります。ただし対象を魚類まで広げたという記述は確認できませんでした。
場所によって、線引きはこう変わります
法律の外側では、場所ごとに呼びかけの強さが違います。公式資料で確認できた範囲を並べました。
| 場所・制度 | 餌やりの可否 | 根拠 |
|---|---|---|
| 自然公園法(海域公園地区) | 明文の禁止なし。規制対象は捕獲・殺傷・採取・損傷 | 第22条第3項第2号 |
| 自然公園法(第37条の共通規定) | 鳥類・哺乳類のみ禁止。魚類は対象外 | 第37条第1項第3号 |
| 環境省・国立公園マナーページ | 「野生動物に餌を与えないでください」と広く掲示。罰則の記載なし | 慶良間諸島・西表石垣の公式ページ |
| 恩納村Green Fins | 認定ショップに餌付け禁止を含むガイドライン遵守を求める任意制度。条例ではない | 恩納村公式サイト |
| 御蔵島の自主ルール | イルカ(哺乳類)への餌やりを禁止。魚の規定は確認できず | 御蔵島観光協会公式サイト |
| 一般の海(法律の対象区域外) | 明文の禁止なし | ー |
具体的な海水浴場で「魚に餌をやらないでください」と明記した掲示は、調べた範囲では見つかりませんでした。
まき餌釣は、餌やりと別の規制です
「まき餌釣を禁止している県がある」という話を聞いたことがあるかもしれません。これは漁業調整規則が定める漁法の規制です。魚を釣るために撒き餌を使う行為を指します。和歌山県のみ、委員会指示で定めた海域に限り、船舶を使ったまき餌釣を禁止しています。観賞目的で魚に餌を与える行為とは、法的に別のカテゴリーです。
合法でも、やっていいとは限りません
法律上の禁止規定が無いことと、やっていいことは別の話です。環境省のマナーページは魚を含む野生動物一般への自粛を掲示しています。法律より広い基準を、現場で求めているからです。
査読論文は「思ったほど単純ではない」と報告しています
台湾・緑島のサンゴ礁を調べた査読論文(Ambio誌、2019年)があります。給餌された草食魚の多くは、底生藻類を食べる頻度を減らしていませんでした。一方で、給餌地点では緑藻の被覆率が高かったと報告しています。論文は「広く持たれた前提には疑問符が付く」としています。影響が無いと言っているのではありません。想定されていた影響と、実際に測れた影響が一致しなかった、という報告です。
この記事で確認できなかったこと
- 恩納村Green Finsガイドライン本文の原文(餌付け禁止の記載は新聞報道経由のみ)。
- 座間味村・竹富町・石垣市の条例に餌付けを直接規定する条文があるか。
- 具体的な海水浴場で餌やり禁止を明記した掲示の実例。
次の一歩
- 国立公園・国定公園の区域かどうか、環境省のページで確認してください。 マナーページの呼びかけは区域ごとに違います。
- 認定ショップを使う予定なら、Green Finsのガイドラインを店舗に確認してください。 条例ではなく店舗の自主ルールです。
- 法律で禁じられていないからやる、ではなく、自分で判断してください。 給餌が魚の行動や藻類の被覆に影響する可能性は報告されています。
拾い物のルールは海岸の貝殻・流木の持ち帰りにまとめています。魚のサイズ規制は素潜りの魚の体長制限、密漁の罰則全体は密漁の罰則一覧にあります。沖縄の危険生物は沖縄シュノーケリングの危険生物をご覧ください。
「野生動物(鳥類又は哺乳類に属するものに限る。以下この号において同じ。)に餌を与えること…」 — 自然公園法 第37条第1項第3号
潜る前の共通の注意は安全の原則にまとめています。
本記事は2026年8月23日時点で公開されている法令・行政資料に基づく情報提供であり、法律の助言ではありません。個別の事案については、環境省の各国立公園管理事務所、都道府県の担当課、または弁護士にご相談ください。
