「素潜りでたも網を持って、追い込んだ魚をすくっています。これって漁具として問題になりますか」

この記事は、たも網(柄の先に袋状の網が付いた道具)で魚を採ってよいか迷っている方に向けて書いています。

答えから言います。たも網は多くの県で遊漁の漁具として認められていますが、可否は県で割れます。 千葉・東京・神奈川・静岡・兵庫は火光(集魚灯や照明器具)の使用禁止つきで使えます。北海道は網口・網の長さが40センチメートル未満のものに限られます。

持ち帰りは3つです。

  1. たも網は多くの県で可、ただし条件つきです。 火光禁止・サイズ制限・船舶使用禁止など、条件は県ごとに違います。
  2. 潜水してたも網を使うことを明文で禁じる条文は、確認した6県に見当たりませんでした。 やすの規則にある「水中眼鏡を併用する場合を除く」という除外は、たも網にはありません。
  3. 岡山と佐賀は逆のねじれがあります。 素手(徒手採捕)は歩行のみに限られ、素潜りでの採捕は禁止です。ただし同じ一覧で、たも網は使用が認められています。

やすとの違いは、他の記事に譲ります

やすの規則は県ごとに罰則も含めて素潜りで魚突きは違法?にまとめています。やすの規則には「水中眼鏡を併用する場合を除く」という除外が付く県が多くあります。これは、潜水してやすを使う採り方を規則が分けて書いているということです。

たも網の規則には、この除外文言がありません。潜水を明文で禁じてもいませんが、明文で想定してもいない、という状態です。ここではたも網に絞って、県ごとの違いを見ていきます。

12県でたも網の扱いは違う

水産庁が公開している都道府県別一覧(令和8年3月31日現在)から、たも網・さで網・投網の扱いを12県で確認しました。

たも網 さで網 投網 備考
北海道 ○(網口・網長40cm未満) ×(使用禁止) ×(使用禁止) 規則48条(2)
千葉 ●(火光等の使用禁止) ●(火光等の使用禁止) ●△(火光等・船舶禁止) 規則45条(2)
東京 ●(火光等の使用禁止) ●(火光等の使用禁止) ●△(火光等・船舶禁止) 規則40条(2)(原文未確認)
神奈川 ●(火光等の使用禁止) ●(火光等の使用禁止) ●(火光等の使用禁止) 規則41条(2)
静岡 ●(注34・火光は海区委承認) ●(注34・火光は海区委承認) △(船舶禁止) 規則43条(1)
三重 ○(条件の記載なし) ○(条件の記載なし) △(船舶禁止) 規則48条(2)
和歌山 ○(条件の記載なし) ○(条件の記載なし) △(船舶禁止) 規則45条(2)(原文未確認)
兵庫 ●△(注19・火光等と船舶禁止) ●△(火光等と船舶禁止) ●△(火光等と船舶禁止) 規則40条(2)
岡山 △(船舶禁止) ×(使用禁止) △(船舶禁止) 徒手採捕は注30で潜水不可
佐賀 ○(条件の記載なし) ○(条件の記載なし) △(船舶禁止) 徒手採捕は注30で潜水不可
長崎 ●(火光等の使用禁止) ×(使用禁止) ○(条件の記載なし) 確認できず
沖縄 ○(条件の記載なし) ○(条件の記載なし) △(船舶禁止) 確認できず

○は条件の記載が無く可、●は集魚灯・火光・照明器具の使用禁止つきで可、△は船舶の使用禁止つき、×は使用禁止です。東京・和歌山の条番号は要約で確認したもので、原文までは確認していません。

たも網の使用可否を県別に判定した一覧。北海道は網口40センチメートル未満のみ可、千葉・神奈川・静岡・兵庫は火光禁止つきで可、三重・佐賀は条件の記載なく可、岡山と佐賀は網が可でも徒手採捕は潜水禁止。
図: 水産庁「遊漁における使用できる漁具・漁法」都道府県一覧からBLUE BREATHが分類(2026年8月23日時点)。○●△×は水産庁一覧の表記に基づく。

「確認できず」は「規則が無い」ではなく、今回調べた範囲で公式資料に見つけられなかったという意味です。潜る前に、その県の漁協か水産担当課に確認してください。

条文の原文には、潜水を禁じる文言がありません

神奈川県漁業調整規則第41条は、遊漁者が使ってよい漁具・漁法を並べています。

(1)くまで(幅十五センチメートル以下のものに限る。)(2)たも網、又(さ)手網及びざる(3)投網(4)やす及びいそがね(夜間において使用する場合及び水中眼鏡を併用する場合を除く。)(5)竿釣り及び手釣り(6)徒手採捕 — 神奈川県漁業調整規則第41条

やす(4号)には「水中眼鏡を併用する場合を除く」という除外が付いています。たも網(2号)には、同じ除外がありません。除外が無いことは、「潜水しての使用を認めている」という意味ではありません。条文が、その場面を分けて書いていない状態です。静岡・三重・兵庫・北海道・千葉の規則も同じ書き方で、たも網に潜水除外の文言は確認できませんでした。

岡山と佐賀は、なぜねじれるのか

水産庁の一覧は、岡山・佐賀の徒手採捕についてこう注記しています。

歩行徒手採捕のみ可能(素潜りなどでの採捕は禁止)。 — 水産庁「遊漁における使用できる漁具・漁法」都道府県別一覧・注30

素手で採る場合は、歩いて届く範囲に限られ、潜っての採捕は禁止です。ところが同じ一覧で、たも網は岡山が船舶使用禁止つきで、佐賀は条件の記載なく使用が認められています。同じ県の中で、素手は潜れず、網は潜れる状態です。

網で採ってよい対象は?

漁具として合法でも、対象が漁業権の対象種なら別の問題になります。共同漁業権は漁協が岸の浅場で貝や定着性の生き物を採る権利で、区域内で組合員以外が採ると漁業権侵害です。魚類は漁業法第60条第5項第1号の対象から基本的に外れますが、貝・ウニ・タコなどは対象種のことが多いです。詳しくは素潜りでサザエ・アワビは違法?にまとめています。

魚を追い込んでたも網ですくうこと自体が合法な県もあります。ただし対象が漁業権の対象種に変わった瞬間、話は網の可否ではなく対象種の可否になります。夜間はさらに別の規制が重なることがあり、夜の素潜りは違法?で県ごとの規制をまとめています。

この記事で確認できなかったこと

  • 東京40条・和歌山45条の原文(水産庁一覧の要約で条番号のみ確認)。
  • 長崎・沖縄のたも網に関する規則の個別規定。
  • スカリ(採った獲物を入れる網かご)を明示的に規制する条文。

次の一歩

  1. 自分が潜る県の名前で「◯◯県漁業調整規則」を検索し、たも網の項目を確認してください。 上の表は出発点で、正本は県のサイトにあります。
  2. 火光・集魚灯を使うつもりなら、必ず条件を確認してください。 千葉・東京・神奈川・静岡・兵庫は禁止つきの可であり、条件を外すと違反になります。
  3. 貝・ウニ・タコなど対象が変わったら、その都度、対象種が漁業権にかかっているか確認してください。 網の可否と対象種の可否は別の話です。

潜る前の共通の注意は安全の原則にまとめています。

本記事は2026年8月23日時点で公開されている法令・規則・行政資料に基づく情報提供であり、法律の助言ではありません。個別の事案については、都道府県の水産担当課、漁業協同組合、または弁護士にご相談ください。