「同じように練習しているのに、自分だけ毎回耳が抜けません。センスが無いんでしょうか」

この記事は、耳抜きのやり方を練習しても抜けない、または人より抜けにくいと感じている方に向けて書いています。

答えから言います。耳抜きができない原因は1つではありません。 毎回抜けないなら耳管(鼻の奥と耳をつなぐ管)の個人差、その日だけなら炎症です。深くなってから抜けないならタイミング、焦ると悪化するなら力みが疑われます。

持ち帰りは3つです。

  1. 毎回・どのダイブでも一貫して抜けにくいなら、耳管そのものの個人差の可能性があります。
  2. その日だけ抜けないなら、風邪やアレルギーによる炎症が原因です。
  3. 毎回抜けないタイプは、耳鼻咽喉科の耳管機能検査を受ける価値があります。

抜けない原因は6タイプに分かれます

「抜けない」という結果は同じでも、体の中で起きていることは人によって違います。DANとPADI公式ブログが挙げる系統を、見分け方とあわせて整理しました。

タイプ 何が起きているか 見分け方
①耳管が狭い(Stenotic) 開くのに最大1200デカパスカルの圧力が必要で、開閉も遅い 毎回・どのダイブでも一貫して抜けにくく、テクニックを変えても改善しない
②耳管が開きすぎ(Patulous) 200デカパスカル未満の弱い圧力で開いてしまう 自分の声が響く、こもって聞こえる
③一時的な炎症・充血 風邪・アレルギー・副鼻腔炎で粘膜が腫れ、耳管まで塞がる 体調不良の日・鼻水が出ている日だけ抜けない
④タイミングの遅れ 圧差が大きくなってから抜こうとすると、軟部組織が耳管を押しつぶす 深く潜ってから急に抜けなくなる
⑤緊張・力み 力むと軟口蓋(のどの奥の柔らかい部分)が上がり、空気を送る動作がうまく働かない 焦ると悪化し、リラックスすると改善する
⑥既往のバロトラウマ 過去の強い中耳バロトラウマの後、機能が落ちたまま戻っていない 過去に強い痛み・めまい・急な難聴を経験している
耳抜きができない原因を6タイプに分類した一覧。個人差(狭い・開きすぎ)、炎症、タイミング、力み、既往歴に分かれ、見分け方も異なる。
図: DAN「The Ears & Diving」・PADI公式ブログ・Uzun 2005からBLUE BREATHが分類(2026年8月23日時点)。

6つのタイプは重なることもあります。もともと耳管が狭い人が風邪をひけば、③の炎症が①の個人差に上乗せされ、いつも以上に抜けにくくなります。

耳管が狭いタイプは、テクニックを変えても改善しません

PADI公式ブログが紹介する研究によれば、健康な耳管は200〜650デカパスカルの圧力で開きます。これに対して「Stenotic型」と呼ばれるタイプは、開くのに最大1200デカパスカルの圧力が必要で、開閉そのものも遅いとされています。

やり方を色々試しても毎回同じように抜けにくいなら、この個人差を疑うべきです。基本のやり方は耳抜きの基礎ガイド、複数の技法の比較は耳抜きの練習法にあります。

毎回抜けない人は、耳鼻科の耳管機能検査に価値があります

「センスが無い」で片付ける前に、検査という選択肢があります。31人のダイバーが計774本潜った研究では、14人(45%)・19耳(31%)に症状のある中耳バロトラウマが起きました。耳管機能検査(9段階の圧力テスト)で異常が見つかったダイバーは、その後のバロトラウマのリスクが有意に高かったと報告されています。

検査単体の的中率は69〜76%でしたが、2つの検査を組み合わせると86%まで上がりました。毎回どのダイブでも抜けないタイプの人は、耳鼻咽喉科でこの検査を受ける価値があります。

受診の基準を覚えておいてください

DANは、潜水中に痛みやめまい、急な難聴を感じたら、その場でダイブを中止するよう述べています。症状が続く場合は、再び潜らず医師の診察を受けてください。

“If at any time during the dive you feel pain, experience vertigo or note sudden hearing loss, abort the dive. If these symptoms persist, do not dive again and consult your physician.” — DAN “The Ears & Diving”

耳からの出血や液体、数時間以上続く痛みも受診の目安です。潜る前の共通の注意は安全の原則にまとめています。

その日だけ抜けないなら、炎症を疑ってください

鼻・副鼻腔・耳管の粘膜は1本につながっています。風邪やアレルギー、副鼻腔炎で粘膜が腫れると、耳管まで塞がりやすくなります。DANは上気道感染症・花粉症・アレルギー・喫煙・鼻中隔の湾曲が耳抜きを妨げる要因になると説明しています。

普段は抜けるのに今日だけ抜けにくいなら、耳管の個人差ではなく一時的な炎症です。鼻水の日の対処は鼻水・鼻づまり時の耳抜きにあります。

深くなってから抜けない・焦ると悪化するなら、テクニックの問題です

浅いうちは抜けるのに、深くなってから急に抜けなくなる場合は、④タイミングの遅れが疑われます。圧差が大きくなってから抜こうとすると、周囲の軟部組織が耳管を押しつぶしてしまうためです。

強すぎるバルサルバは逆効果です

強く息むタイプのバルサルバ法は、周囲の組織まで圧迫し、かえって耳管を閉じることがあります。焦ると悪化し、力を抜くと改善するなら、⑤緊張・力みのタイプです。片耳だけ抜けない場合は片耳だけ耳抜きできないにまとめています。

この記事で確認できなかったこと

  • 耳管が狭い・開きすぎるという圧力数値の、一次となる原論文。
  • DAN Japanによる、日本語での体系的な原因分類ページ。
  • 子どもの耳管の形状差が、抜けにくさにどう影響するか。

次の一歩

  1. 毎回・どのダイブでも一貫して抜けないなら、耳鼻咽喉科で耳管機能検査を受けてください。 テクニックの練習だけでは解決しません。
  2. その日だけ抜けにくいなら、まず体調と鼻の状態を確認してください。 対処は鼻水・鼻づまり時の耳抜きにあります。
  3. やり方自体に不安があるなら、耳抜きの基礎ガイドを読み直してください。 タイプが分かってから練習すると近道です。

本記事は2026年8月23日時点で公開されている医療・研究資料に基づく情報提供であり、医学的な診断ではありません。耳の症状が続く場合は、耳鼻咽喉科医にご相談ください。