「鼻水は出ているけど、耳抜きさえできれば潜っていいですか」

この記事は、鼻の調子が悪いまま潜っていいか迷っている方に向けて書いています。答えから言います。さらさらの鼻水で耳抜きがふだんどおりできるなら、潜って大丈夫です。鼻が詰まっている、耳がすでに痛い、点鼻薬で無理に通した、のどれかに当てはまるなら、その日は潜らないでください。

親記事の耳抜きができない理由とフレンツェル法(フレンツェル法=舌で空気を送る耳抜きの方法)はやり方の話でした。耳抜きで耳が痛いのはなぜ?は浅い深度で痛くなる仕組みの話でした。この記事は「鼻の状態別に潜っていいか」と「失敗して痛くなったあとどうするか」の2つだけに絞ります。

鼻の状態で、耳抜きの可否は変わります

耳抜きは、耳管(鼻の奥と中耳をつなぐ細い管)を通して空気を送り、中耳の圧を外の水圧に合わせる動作です。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、風邪で耳管が腫れて中耳の圧調整ができなくなる状態を「耳管狭窄症」と説明しています。耳抜きが失敗するかどうかは、技術より先に耳管が通っているかどうかで決まります。

4つの状態を並べます

一次データから、状態ごとの可否を整理します。

鼻の状態 潜っていいか その日にできること
さらさらの鼻水(詰まりなし) 潜ってよい ふだんどおり耳抜きしながら潜降する
鼻が詰まっている(耳管狭窄症) 潜らない 陸で休む。耳鼻科での相談も選択肢
すでに耳が痛い・詰まった感じがある 潜らない 潜降せず引き返す。無理に押し込まない
点鼻薬で無理に通した状態 潜らない 薬に頼らず鼻が通る日まで待つ
鼻の状態別に耳抜きして潜っていいかを示した一覧。さらさらの鼻水は潜ってよい、鼻が詰まっている状態と耳がすでに痛い状態は潜らない、点鼻薬で無理に通した状態も潜らない。
図: 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳の症状」・DAN「Sinus Barotrauma」・佐藤製薬ナザール添付文書(PMDA登録)から BLUE BREATH が作成。診断ではなく潜っていいかの目安。

なぜ点鼻薬で通してから潜るのは危ないのか

「詰まっているなら、点鼻薬で通してから潜ればいい」と考えたくなります。ここが今回いちばん伝えたいところです。

DANの説明では、市販の血管収縮薬(鼻の粘膜を収縮させる薬)が潜水中に切れると、浮上時に鼻腔の空気が抜けなくなります。これが「リバースブロック」です。潜降は選べても、浮上は必ずしなければなりません。だから浮上時に起きるこの状態のほうが、潜降時より危険です。

短時間作用型の市販スプレーを繰り返し使うとリバウンド反応が起き、リバースブロックの舞台を整えることになる。 — DAN「Sinus Barotrauma」

実際に、日本で売られている点鼻薬(佐藤製薬ナザール)の添付文書にも、こう書かれています。

過度に使用しますと、かえって鼻づまりを起こすことがあります。長期連用しないでください。3日間位使用しても症状がよくならない場合は使用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者にご相談ください。

用法・用量は成人で1回1〜2度、1日6回まで、間隔は3時間以上です。繰り返し使って鼻を通し続け、潜り続けるための薬ではありません。 詰まりを一時的に隠す薬であって、耳管が通っている状態に戻す薬ではないからです。

耳抜きに失敗して痛くなったら

ここは方法ではなく、判断だけを書きます。

痛んだら、その場でやめる

痛みが出た時点で、潜降を続けるかどうかの判断は終わっています。その潜水をやめて浮上してください。 我慢して押し込むと、圧の差が鼓膜にかかり続けます。深さは次の機会に取り返せますが、鼓膜の回復には数か月かかることがあります。

潜った後に残る症状は、受診の対象です

聞こえにくさ、耳鳴り、めまい、耳だれのどれかが潜水後に残る場合は、自己判断で様子を見ず、耳鼻咽喉科を受診してください。とくにめまいは、水中で起きると上下が分からなくなるため、次に同じ状態で潜らないという判断がまず必要です。受診すべきかどうかの医学的な線引きは、この記事では示しません。

潜る前の共通の注意は安全の原則にまとめています。

この記事で確認できなかったこと

  • 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会による、潜水・スキンダイビングに絞った公式の注意喚起の原文
  • 鼓膜穿孔(鼓膜に穴が開くこと)について、同学会が一般向けに出している独立した解説ページ

次の一歩

今日の鼻の状態を、上の4つのどれかに当てはめてください。さらさらの鼻水以外に当てはまるなら、潜るかどうかより先に、その日は休む選択を取ってください。耳抜きのやり方そのものを見直したいときは、耳抜きができない理由とフレンツェル法を読んでおいてください。