「海水浴場の看板にシュノーケル禁止と書いてある気がします。条例で決まっているんでしょうか」
この記事は、海水浴場でシュノーケルやフィンを使ってよいか迷っている方に向けて書いています。
答えから言います。都道府県の海水浴場条例に、シュノーケルやフィンを禁止する条文は見当たりません。 条例が定めているのは、もり・やす・水中銃など危険な器具の携帯・使用禁止だけです。禁止か許可かは、条例より下のレベル、個々の海水浴場(開設者)のルールで決まります。
持ち帰りは3つです。
- 条例レベルでは、シュノーケル・フィンを名指しした禁止規定はありません。 見つかるのは銛・やす・水中銃の携帯禁止だけです。
- 禁止・許可を実際に決めているのは浜です。 豊崎美らSUNビーチは個人持込を禁止し、波の上ビーチは体験として提供しています。
- 同じ浜の案内ページ内でも、記載が食い違うことがあります。 由比ガ浜のフィンの扱いがその例です。
条例が禁じているのは、銛・やす・水中銃だけです
神奈川・和歌山・福島・石川・静岡(西伊豆町)で確認しました
神奈川県の「海水浴場ルールに関するガイドライン」(令和8年3月)は、モデル条文を示しています。挙げているのは飲酒・入れ墨の露出・粗野な言動・音響機器・焚き火・ごみの6項目です。シュノーケル・フィン・潜水器具といった語は、PDF全文を通して一つも出てきません。
和歌山県の条例は第9条で、水中銃・もりなど危害を及ぼすおそれのある器具の携帯を禁じています。福島県・西伊豆町(静岡県)の条例も、ほぼ同じ文言で銛・やす・水中銃を規制しています。石川県の条例は公衆衛生と危険防止の措置を定める目的で、第7条は標旗の移動やボート・銃器などの持込みを対象にしています。
これらの条例が守ろうとしているのは、銛やもりで人を傷つけないことです。シュノーケルやフィンは、それ自体で人を傷つけにくい道具です。そもそも条例の視野に入っていないと読めます。
禁止を決めるのは条例でなく浜です
条例(県・市)と、実際の浜(開設者)のルールを並べると、扱いのレベルがはっきり分かれます。
| 主体 | 根拠文書 | シュノーケル | フィン | 銛・やす・水中銃 |
|---|---|---|---|---|
| 神奈川県(ガイドライン) | 海水浴場ルールに関するガイドライン | 規定なし | 規定なし | 規定なし |
| 藤沢市(同ガイドライン下の運用) | 藤沢市海水浴場ルール | 規定なし | 規定なし | 規定なし |
| 石川県(条例) | 海水浴場に関する条例 | 規定なし | 規定なし | 危険物携帯禁止 |
| 西伊豆町・静岡(条例) | 西伊豆町海水浴場条例 | 規定なし | 規定なし | 携帯・使用禁止(第6条4項) |
| 和歌山県(条例) | 遊泳者等の事故防止に関する条例 | 規定なし | 規定なし | 携帯禁止(第9条) |
| 福島県(条例) | 事故防止等に関する条例 | 規定なし | 規定なし | 携帯禁止(第9条1項1号) |
| 由比ガ浜(浜のルール) | 公式サイト ご利用案内 | 記載なし | 条件付き許可(記載が食い違う) | — |
| 豊崎美らSUNビーチ(浜のルール) | 公式サイト 利用案内 | 個人持込禁止 | 個人持込禁止 | — |
条例の行はすべて「規定なし」で揃っています。一方、浜の行は禁止・条件付き・記載の食い違いと、浜ごとにばらばらです。同じ「海水浴場」でも、決めているレイヤーが違います。
浜ごとに割れています ー 禁止から体験提供まであります
豊崎美らSUNビーチは公式利用案内で、個人持ち込みによるマリンスポーツを禁止しています。シュノーケリングもその一つとして名指しされています。個人でシュノーケルセットを持ち込んで泳ぐことは、この浜では認められていません。
一方、那覇の波の上ビーチは「体験ダイビング&シュノーケリング」というプログラムを掲載しています。シュノーケリングを提供の一部にしています。同じ沖縄県内でも、浜によって立ち位置が逆です。
由比ガ浜は同じ案内ページの中で許可と禁止が両方書かれています
由比ガ浜の公式ご利用案内には、フィン付きボディボードが「ソフトボードエリア」で使用可能という記述があります。ところが同じページの別の箇所には、「フィンがついているボディボードは遊泳時間内にご使用頂けません」という記述もあります。
どちらも同じ公式サイトの同じ案内ページに載っている文言です。制度としてのルールと、現地の案内表示が一致していない例と言えます。由比ガ浜でフィン付きボディボードを使いたい場合は、当日の掲示か係員に直接確認するのが確実です。
遊泳区域の外は、条例の外でもあります
条例の禁止規定には「遊泳区域内で」といった限定がつくことが多いです。区域の外に出ると、条文の対象から外れる場合があります。ただし区域外は、監視員による保護も同時に外れます。
事故者の5割超が死亡・行方不明、ライフジャケット着用は1割です
海上保安庁の「スノーケリングガイド基準」(令和5年9月)は、事業者向けの基準文書です。冒頭で過去5年(平成30年〜令和4年)の数字を示しています。スノーケル使用中の事故者数は265人、年平均53人です。事故者のうち5割を超える方が死亡または行方不明で、ライフジャケット着用率は約1割にとどまっています。
区域の外に出るほど自由度は上がりますが、リスクも同時に上がります。ライフジャケットを着けているかどうかで、結果が大きく変わるという数字です。
この記事で確認できなかったこと
- 沖縄県条例本体の、個人利用者向けの条文。
- 千葉県・静岡県レベルの海水浴場関連条例の有無。
- 逗子市・鎌倉市の条例で、県条例(昭和34年条例第4号)本体が定める危険物規定の全文。
次の一歩
- 行く予定の海水浴場の公式サイトと現地の掲示を確認してください。 条例より、開設者のルールのほうが実際の可否を決めています。
- 記載に迷ったら、その場の監視員や係員に直接聞いてください。 由比ガ浜のように、公式案内の中で記載が割れている浜もあります。
- 遊泳区域の外に出るなら、ライフジャケットを着けてください。 区域外は監視員の保護が及ばず、着用の有無が結果を左右します。
銛・やす・水中銃を使う魚突きの規制は、素潜りで魚突きは違法?にまとめています。事故の統計は海保のデータで見る素潜り事故にあります。沖縄のライフジャケット条例はシュノーケリングにライフジャケットは義務?を、潜る前の共通の注意は安全の原則を参照してください。
施設内での個人持ち込みによるマリンスポーツ(シュノーケリング、水上バイク、ウインドサーフィン、原動機付乗物等)は禁止です。 — 豊崎美らSUNビーチ「利用案内」
本記事は2026年8月23日時点で公開されている条例・行政資料・各施設の公式情報に基づく情報提供であり、法律の助言ではありません。個別の海水浴場での可否は、開設者(自治体・管理団体)に直接ご確認ください。
