「着岸率を数えた人は、実際に行って、着いたんですか」

もっともな問いだと思います。わたしは御蔵島ドルフィンスイムは何泊が安全かで、東海汽船の運航実績4,928日分を数えて、通年の着岸率59.1%、8月は76.8%という数字を出しました。この記事は、その数字を出した本人が、その8月に行ってきた記録です。御蔵島へ行くと決めた方に向けて、数字に出てこない部分だけを渡します。

先に立場を明かします。わたしは御蔵島が初めてではありません。3〜4年前から通っていて、行くたびに同じ宿に泊まっています。着かなかった回の話も出てきます。手順そのものは初めての御蔵島ドルフィンスイムに、運賃と総額は行き方と料金に書いたので、ここでは繰り返しません。

持ち帰りは3つです。

  1. 今回は通常運航で着き、3本出て3本とも会えました。 数字どおりでした
  2. 初回は着きませんでした。 八丈島まで流されて、折り返しで上陸し、2本しか泳げませんでした
  3. 潜るのは思ったより難しいです。 3〜4m潜れれば十分ですが、イルカのタイミングに合わせるのは別の技術です

今回、船は着きました

結果から書きます。今回は普通に着きました。 しかも条件付き出航ですらなく、★がつかない通常運航で竹芝を出ています。たいてい★がつく島なので、かなり良い引きです。

朝、島が見えてきたときの海は、わたしが御蔵島で見たなかでいちばん穏やかでした。白波が立っていません。6時に何ごともなく着きました。自分で出した8月の着岸率は76.8%で、4回に3回は着く数字です。その当たりの側に入りました。集計した本人が言うのも妙ですが、数字どおりでした。

ひとつ補足があります。港が穏やかなことと、ドルフィンスイムが良いことは別です。 島の裏側は風があって波が立っています。そして穏やかな側にイルカはいません。

一度は、着きませんでした

わたしの初回は着きませんでした。台風で予約が何度も飛んだうえで、ようやく行けることになった便です。条件付き出航で出て、朝6時に御蔵島の岸に着けず、船はそのまま八丈島まで行きました。利用者のあいだでは「八丈流し」と呼ばれています。

八丈島から折り返す便で御蔵島にもう一度近づき、そこで着岸できて、ようやく島に降りました。その回は午後と翌朝の2本しか泳げませんでした。日程を「3本泳げるか」で決めるようになったのは、この経験があるからです。

着けずに東京へ戻ることになった場合、わたしのときは船も宿も費用がかかりませんでした。運送約款の原文は確認できていないので、お金の判断の前には東海汽船へ直接確認してください。どうしてもその日に入りたい人は、八丈島で降りてヘリコプターで御蔵島に入ります。島で会った電気工事の方がそうしていました。

海に入る

今回は3本出て、3本ともイルカに会えました。

水温は暖かいと感じるくらいで、下は2mmのウェットを着ていました。繰り返し入ると少し冷えます。透明度はかなり良く、10mは余裕で見えていました。流れとうねりは多少ありました。

御蔵島1泊2日の行程を示した縦のタイムライン。竹芝22時30分発、翌5時三宅島着、6時に御蔵島の着岸可否が決まる。着いた日の午前・午後と翌朝の合計3本がドルフィンスイムの上限で、12時35分に御蔵島を出て19時50分に竹芝着。
図: 東海汽船の時刻表(2026年8月21日時点)と、ドルフィンスイム船が1日2回運航する前提から BLUE BREATH が作図。縦の間隔は実時間に比例していない。

船は御蔵島を一周しながら群れを探します。イルカが浮上したところを船長が見つけると、進行方向の先へ回り込んで待ちます。「マスクをつけて準備してください」で、指示された舷から入ります。右から、左から、ときには両方からです。少し進むとキュッキュッという音が聞こえ、向こうから寄ってきます。

距離は、思っているより近いです

近いときで30cmくらいです。手を近づける行為や自撮り棒が禁止されているのは、この距離だからだと思います。実際に入ると、気遣いのお願いではなく、この距離で必要な線引きだと分かります。

イルカにも個体差があります。潜るのが上手な人にはイルカが興味を持って寄ってきて、水中で一緒に鳴きながらぐるぐる回ります。一方で、よく見たら半分眠っているイルカもいて、何ごともなく下を通り過ぎます。同じ1本のなかに、寄ってくる子と通り過ぎる子がいます。この表情の違いを見ているのが、いちばん面白いところです。

フリーダイバーとして、どうだったか

3〜4mまで潜れれば十分です。 5mあればイルカの下に入れます。深さを競う場面ではありません。

はっきりしているのは、イルカが本気で泳いだら人間は絶対に追いつけないことです。一緒に泳げるのは、イルカがゆっくり泳いでいるときや遊んでいるときです。進路を予測して先に潜っておくのが正しいやり方になります。

そのうえで正直に書きます。イルカのタイミングに合わせてきちんと潜るのは、かなり難しいです。入水して、見つけて、急いで潜って、速度に合わせて泳ぎながら撮ります。この一連の動作は、陸で考えているより高度です。何度行っても、うまくいかずにバタバタしている本数があります。技術が「あると有利」なのではなく、「あってもうまくいかない本数がある」が実感に近いです。

数字に出てこなかったこと

思ったより揺れます。 着く日でも船は揺れます。船に強くない方が朝食をしっかり食べて午前の便に乗ると、気持ち悪くなって吐きます。朝はバナナやゼリー飲料にして、宿に先に伝えておいてください。

冬に近い時期はかなり寒いです。 夏の水温の話だけで年間の計画を立てると、ここで足をすくわれます。

参加者の年齢層は偏っています。 20代・30代はほとんど見かけません。多いのは40代・50代で、毎年来ているリピーターがほとんどです。そして、みなさん親切です。話しかけてみることをおすすめします。

相部屋に備えてください。 わたしの宿には相部屋があり、いびきの大きい方と同室になって眠れなかったことがあります。翌朝いちばんの便で泳ぐので、地味に効きます。耳栓とアイマスクを持ち、同室の方と先に一言かわしておくだけでずいぶん違います。2等和室の床は硬くて冷たいので、インフレーターマットと携帯枕があると眠りの質がまったく変わります。

撮影機材は良いものを。 動画を共有すると、一緒に泳いだ人との距離が一気に縮まります。

この記事で確認できなかったこと

  • 欠航・不着岸時の運賃の取り扱い(運送約款の該当条文に到達できず。本文はわたしの実体験です)
  • 「八丈流し」の正式な扱い(公式資料に用語の記載は見つからず)
  • 宿とドルフィンスイムの料金(わたしが払った1軒・1隻の実感で、横断して集計したものではありません)

次の一歩

この記録から、これから行く方が使えることは3つです。

  1. 自分の行く月の着岸率を、先に見てください。 13年分の集計をデータページに置いてあります。確率を知ったうえで日程を決めるほうが、落胆が小さくなります
  2. 欠航したときの予定を、先に決めておいてください。 決めていないと、当日の朝にいちばん判断力が落ちた状態で決めることになります
  3. 初めて行くなら、先に初めてのガイドを読んでください。 手順はそちらにあります

入る前に安全の約束(3つ)だけ目を通しておいてください。この3つが守れていれば、あとはイルカを見ているだけの時間です。

本記事は筆者が2026年8月18日から19日にかけて御蔵島を訪れた記録と、それ以前の複数回の渡航の経験に基づいています。運賃・時刻は東海汽船の公開情報(2026年8月21日時点)によります。料金・運航条件・島のルールは変更される場合があるため、渡航前に必ず公式情報をご確認ください。野生動物との遭遇が保証されるものではありません。