「御蔵島に行ってみたいけど、素人が行っていい場所なんですか」

わたしが最初に感じたのも、これでした。出てくる情報はダイビングを長くやっている人が書いたものばかりで、器材の話が前提のように出てきます。仕事をしながら、器材も持っていなくて、泳ぎに自信もない人間が、何をどの順でやればいいのか。それを書いたものが見つかりませんでした。

この記事は、器材を持っておらず泳ぎにも自信がない方に向けて、社会人になってからフリーダイビングを始めて3〜4年、御蔵島に通っているわたしの位置から書きました。答えから言います。宿を先に取り、日程は「何本泳げるか」で決め、器材は買わない。この3つで、初めてでも行けます。

持ち帰りは3つです。

  1. 宿から取ってください。 船を先に取ると成立しません。動くのは2か月前、電話です
  2. 日程は日付ではなく、何本泳げるかで決めてください。 1泊2日なら3本が上限です
  3. 器材は買わないでください。 水着だけ持っていけば、あとは現地で借りられます

わたしが最初に分からなかった3つ

イルカより、船のほうが難しいです。御蔵島の港は外洋に直接面していて、波が高いと着岸できません。着けない場合、船は島に寄らずに次へ行きます。運航実績を13年分数えると、通年の着岸率は59.1%でした。5日に2日は着きません。

宿を取らないと、島へ渡れません。 御蔵島観光協会は「必ず、宿の予約を済ませてからいらして下さい」と明記しています。わたしは最初、船から予約しようとして順番を間違えました。

島の支払いは、ほとんど現金です。宿もドルフィンスイムも現金でした。普段カードしか使わない生活だと、ここで足をすくわれます。

ステップ1:時期と泊数を決める

狙うのは5月から8月です。この4か月は着岸率が75%を超えます。冬は26〜37%まで落ちるので避けてください。月別の実数は何泊が安全かにあります。

泊数は、1日単位の着岸率だけでは決まりません。時化は数日続くからです。シーズン中の連続する日で数えると、1泊2日で1日も着けない確率は17.2%、2泊3日で9.5%、3泊4日で5.4%です。初めてで「どうしても泳ぎたい」なら3泊4日です。日程が取れないなら1泊2日でも構いません。わたし自身は毎回1泊2日で行っています。

泳げる本数から逆算する

ドルフィンスイムの船は1日2回、午前と午後に出ます。1泊2日なら、着いた日の午前・午後と翌朝で3本が上限です。御蔵島は、イルカを見に行く以外にすることがほとんどない島です。「その日程で何本泳げるか」を先に数えて、少なすぎるなら日程を変えてください。

宿を取るのは2か月前です。つまり2か月先の休みを先に決めることになります。しかも行けるかどうかが確定するのは出港当日の17時です。わたしも最初はこれが怖かったです。伝えられるのは2つです。着けなかった場合の金銭的な損はほとんど無いこと。何度か行っている人ほど、いくつか日程を押さえておいて行けそうな日に行く形にしていること。1回で当てにいかない構えのほうが、この島と相性がいいです。

ステップ2:予約する(順番が決まっています)

御蔵島の予約の順番を示した図。2か月前に宿へ電話し、同じ電話でドルフィンスイムを申し込み、宿が取れてから東海汽船を予約する。出港当日17時に運航が確定し、22時30分に竹芝を出港する。
図: 御蔵島観光協会の案内と、BLUE BREATH の渡航経験をもとに作図。順番を入れ替えると成立しない。
  1. 宿を押さえる
  2. その宿を通してドルフィンスイムを申し込む
  3. 東海汽船を予約する

宿は、電話で取ります。予約サイトはほとんど機能していません。 ネットの枠が空いていないのに、電話をかけると取れる、ということが起こります。空き枠が出るのはおおむね2か月後の日からで、初めてのときは何軒かに順に電話をかけることになります。わたしもそうでした。

ドルフィンスイムは、宿を取る電話で「イルカウォッチングもお願いします」と一緒に伝えます。宿が確保できてから、東海汽船を予約します。竹芝発22時30分の大型客船です。運賃・ヘリ・総額は行き方と料金にまとめました。

ステップ3:持ち物を用意する

ウェイトもスノーケルもフィンも借りられます。水着さえ持っていけば、あとは現地で揃います。 レンタル代は現金です。

持っていくとよいもの: 酔い止め(多めに)、水、魔法瓶に入れた温かい飲み物、曇り止め、防水バッグ、セームタオル、乾かないウェットスーツを入れるゴミ袋、耳栓とアイマスク(宿に相部屋があります)、船の2等和室で寝るならインフレーターマットと携帯枕、現金4万円強。服装はラフなもので大丈夫です。

ステップ4:出発当日と、船の夜

出港当日の17時に、運航状況が最終決定されます。 通常運航・条件付き出航・欠航の3つのどれかです。御蔵島はたいてい条件付き出航です。「出発できた」ことと「島に着ける」ことは別だと思っておいてください。出発前の何日か、Windyというアプリで波と風を見ておくと見当がつきます。

着岸できなかった場合、船はそのまま八丈島まで行き、折り返しの便で御蔵島にもう一度近づきます。わたしの初回はこの折り返しで上陸できました。ただし午前の1本は無くなります。往復とも着けずに戻った場合、わたしのときは船も宿も費用がかかりませんでした。運送約款の原文は確認できていないので、お金の判断の前に東海汽船へ直接確認してください。

船内は23時ごろ消灯します。2等和室は雑魚寝で、かなり寒いです。三宅島に着く5時前後で電気がつき、6時に御蔵島です。

ステップ5:島に着いてから

宿に頼めば朝食が出ます。ただし船に強くない方がしっかり食べてから午前の便に乗ると、気持ち悪くなります。午前と午後の両方に出るなら、朝はバナナやゼリー飲料にしておくと楽です。

船は御蔵島を一周しながら群れを探します。船長の「マスクをつけて準備してください」で、指示された舷から入ります。少し進むと、キュッキュッというイルカの音が聞こえ、向こうから寄ってきます。近いときは30cmほどです。

潜れなくても大丈夫です。水面に浮いて上から見ているだけでも、十分近くを通ります。潜れる方は3〜5mで足ります。イルカが本気で泳いだら人間は追いつけないので、追いかけるのではなく進路を予測して先に入ります。いちばん危ないのは、夢中になって息を止めすぎることです。

守るルールは観光協会が定めています。イルカに触らない、触ろうとしない、餌を与えない、小さい子どもを連れた群れに近づかない、自撮り棒は水中に持ち込まない、という決まりです。気遣いのお願いではなく、規則です。

行く前に、わたしが不安だったこと

泳ぎに自信がありません。 ライフジャケットを着て浮いているだけでイルカは見えますし、船の上から見るだけの参加もできます。ただし、泳ぎに自信がないことは船長やスタッフに先に伝えてください。隠すほうが危ないです。

周りがベテランばかりで、浮かないでしょうか。 年齢層は40代・50代が中心で、20代・30代はあまり見かけません。ただ、みなさん親切です。一度一緒に潜ると距離が縮まります。ひとりで行っても大丈夫です。島で会った方から教わることのほうが多いくらいです。

子どもは参加できますか。 船上からのウォッチングは4〜5歳くらいから。入水は「保護者が面倒を見られる泳力」が条件で、船によっては小学校低学年までは入水禁止です。

この記事で確認できなかったこと

  • 欠航・不着岸時の運賃の取り扱い(運送約款の該当条文に到達できず。本文はわたしの実体験です)
  • 宿とドルフィンスイムの料金(わたしが払った1軒・1隻の実感で、島を横断して集計したものではありません)
  • 「八丈流し」の正式な扱い(利用者の言い方で、公式資料に用語の記載は見つからず)

次の一歩

ここまで読んで「行けそうだ」と思えたなら、順番はこうです。逆にすると全部やり直しになります。

  1. 先に宿を押さえてください。 イルカでも船でもなく、宿がいちばん先です
  2. 船の予約は、行く月の着岸率を見てから決めてください。 13年分の実績をデータページに置いてあります
  3. 器材は、現地で借りてください。 泳ぎに不安があるなら、行く前に一度プールで顔をつけて息を吐く練習を。手順は泳げなくてもできる?にあります

行けなかった日の話も含めて、実際に行った記録はこちらにあります。海で守るのはこの3つだけです。

本記事は東海汽船および御蔵島観光協会の公開情報(2026年8月21日時点)と、筆者の複数回の渡航経験に基づいています。運賃・時刻・島のルールは変更される場合があるため、渡航前に必ず公式情報をご確認ください。野生動物との遭遇が保証されるものではありません。