「買ったばかりのマスクが、5分で真っ白になった」

器材が悪いわけでも、息の仕方が悪いわけでもありません。新品のマスクは、そのままでは曇るようにできています。メーカー自身がそう書いています。

この記事は、初めて自分のマスクを買った方に向けて書きました。答えから言います。やることは2つだけです。最初の1回だけやる下処理と、毎回やる曇り止めです。 この2つは別のもので、順番も決まっています。

持ち帰りは3つです。

  • まず、レンズがガラスかプラスチックかを確かめてください。 やっていい下処理が変わります
  • 最初の1回だけ、内側の油膜を落としてください。 油膜が残っていると、曇り止めが効きません
  • 海に入る直前に、毎回曇り止めを塗ってください。 下処理は1回だけ、こちらは毎回です

曇りとは、何が起きている状態か

外の水がレンズを冷やし、レンズの内側の温度が露点(水蒸気が水に戻る温度)を下回ると、吐いた息の水蒸気がレンズの上で水に戻ります。このとき水は一枚の膜ではなく、無数の細かい水滴になって付きます。

何もしないレンズと曇り止めを塗ったレンズの断面を並べた図。何もしないレンズには丸い水滴が並んで光が四方に散り、白く曇って見える。曇り止めを塗ったレンズでは水が平らな膜になり、光が散らずに通る。
図: 曇りと防曇の仕組みを BLUE BREATH が作図。曇り止めは水を消すのではなく、水滴を連続した膜に変えている。

白く見えるのは、水滴の丸い表面が光を四方に散らしているからです。 水そのものは透明なのに、粒の形をしていると向こうが見えません。界面科学の計測機器を作る協和界面科学の技術解説によれば、曇り止めは水滴を均一な膜に広げて光の散乱を抑えています。つまり曇り止めは水を消していません。水を広げています。

新品が特に曇るのは、油が残っているからです

TUSAの公式サイトに理由が書かれています。

新品のマスクレンズの表面にはマスクスカート(顔に当たる部分)の素材、シリコンから気化した少量のシリコンガスの影響により油膜がついている場合があります。 — 株式会社タバタ(TUSA)

油膜が残っていると、水は膜になって広がれず、水滴のまま弾かれます。この状態では、どんな曇り止めを塗っても効きません。 油を落とすのが先です。

TUSAが書いている落とし方は、食器用クレンザーとスポンジで内側を洗う、というものです。完全に落とすにはレンズをフレームから外す必要があるが、必ずショップでやってもらうこと、とも書いています。不完全に組み立てると水漏れの原因になるからです。自分で分解しないでください。

ここが本題:歯磨き粉の指示が、メーカーで真逆です

油膜落としでいちばん有名なのが歯磨き粉です。調べると、公式の指示が正面からぶつかっていました。

Aqualungの公式ページは、製造の工程でレンズに薄いシリコンの膜ができるため最初に落とす必要があるとして、ペースト状の歯磨き粉が理想的だと書いています。指でこすりつけてからよくすすぐ手順です。

一方、フリーダイビングの器材を作るMolchanovsは、歯磨き粉を使ってはいけない、ライターで炙ってもいけない、と書いています。同社のマスクのレンズがガラスではなくプラスチック(ポリカーボネート)だからです。

should not be “pre-treated” with toothpaste or burned with a lighter — Molchanovs

歯磨き粉で下処理したり、ライターで炙ったりしてはいけない、という意味です。

分かれ目は、レンズの素材でした

メーカー 歯磨き粉 レンズの前提
Aqualung 理想的だと明記 ガラス
Molchanovs 使ってはいけないと明記 プラスチック
TUSA 記載なし(食器用クレンザーを案内)

歯磨き粉には研磨剤が入っています。ガラスなら表面の膜を削り落とせます。プラスチックだと、膜より先に本体が傷つきます。「歯磨き粉で磨け」は、レンズの素材が変わると答えが逆になる助言でした。 自分のマスクがどちらかは、製品ページか説明書にあります。フリーダイビング向けの容量の小さいマスクにはプラスチックが使われていることがあり、ダイビング用の多くはガラスです。

GULLについては公式サイトに手入れのページを見つけられませんでした。「GULLは歯磨き粉」として流通している情報の出どころは雑誌の取材記事で、メーカー自身の記述ではありません。

毎回やるほう:曇り止めの手順

下処理が済んだら、あとは海に入るたびの作業です。Aqualungは、通常の曇りは市販の曇り止め剤または唾液で防げるとして、レンズにこすりつけてからすすぐ、と書いています。唾液を公式に認めているメーカーは、確認できた範囲ではここだけでした。

すすぎの強さについては、すすぎすぎると曇り止めの層まで流れるので軽くにとどめる、と案内しているメーカーもあるようですが、原文には到達できませんでした。手元の曇り止めの説明書きが優先です。

使ってはいけないもの

Aqualungは、アルコール、油、ガソリン、エアゾール、化学溶剤との接触を避けるよう書いています。市販の曇り止め剤の中にはアルコールなどを含むものがあり、マスクのプラスチックを傷めることがあります。保管は他の器材と分けます。黒い顔料が移って、透明なシリコンが変色するためです。

もう一つ、Molchanovsが挙げている実務的な注意です。日焼け止めの付いた指でレンズの内側に触れると、曇ります。塗ったら手を洗ってからマスクを持ってください。 何を着るかはシュノーケリングの服装にまとめました。

この記事で確認できなかったこと

  • GULLとBismの公式の手入れページ(サイト内に見つけられず。無いと断言もできない)
  • CressiとSEACの取扱説明書の原文(すすぎの強さの記述は、この2社だった可能性)
  • マスクのサイズが合っていないことと曇りの関係(メーカー公式の記述は未確認)

次の一歩

新しいマスクが手元にあるなら、順番はこうなります。

  1. まず、レンズの素材を確かめてください。 ガラスかプラスチックかで、次にやることが変わります
  2. ガラスなら研磨剤の入った方法が使えます。プラスチックなら歯磨き粉は使わないでください。 迷うなら、食器用クレンザーとスポンジで内側を洗ってください。TUSAが公式に案内している方法です
  3. 海に入る直前に、曇り止めを塗ってください。 下処理は最初の1回だけ、これは毎回です

下処理が済んだマスクで一度海に入ると、見え方がまるで違います。試す場所を探すなら、下の「近くの練習会を探す」から都道府県で拠点を選べます。

本記事は各メーカー公式サイトの2026年8月21日時点の記述に基づく情報提供です。手入れの方法は製品によって異なります。必ずお手持ちの製品の説明書きに従ってください。