「うちの子、耳抜きができるようになるのはいつからですか」

この記事は、子どもに耳抜きを教えていいのか迷っている親御さんに向けて書いています。答えから言います。子どもの耳管は大人より通りにくい構造で、指導団体は年齢で講習の線を引いています。 親が陸でできる確認は、つばを飲んで耳がパチッと言うかだけです。海の中で教える技術ではありません。

持ち帰りは3つです。

  • 子どもの耳管は太く短く水平で、機能が育つのは7歳以上です
  • PADIは8・10・12・15歳、AIDA2は18歳で講習の線を引きます
  • 親が陸でできるのは確認だけ。上達させる練習ではありません

子どもの耳管は、大人と形が違う

潜ったときに耳へ空気を送る通り道が、耳管(鼻の奥と中耳をつなぐ細い管)です。日本小児感染症学会の資料は、子どもの耳管が成人と構造から違うと書いています。

小児の耳管の構造は,成人と比較してより太く,短く,水平に近くなっている.また,耳管の能動的換気能は7歳以上で発達してくるといわれており,幼小児期は耳管の機能も未熟である. — 日本小児感染症学会『小児感染免疫』

太く短く水平だと、鼻の奥の分泌物が中耳に入り込みやすくなります。同じ資料の要因表には、無理な耳抜きと、もぐる動作そのものが、中耳炎になりやすい要因として並んでいました。

海外でも同じ理由が挙げられている

Divers Alert Network(DAN)も、同じ方向の説明をしています。

Children are predisposed to ear infections as a consequence of their Eustachian tubes’ immature form and function, which may also increase their risk of middle-ear barotrauma. — Divers Alert Network「Children and Diving」

日本語にすると「子どもは耳管の形と機能が未熟なために中耳炎になりやすく、これは中耳の圧外傷のリスクも高める可能性がある」です。国内外の資料が、同じ構造の違いを指しています。

年齢帯ごとに、団体はどこまで認めているか

年齢帯ごとに指導団体が認めている活動を並べた一覧。8歳はPADI Bubblemakerで水深2m未満・耳抜き不要、10歳はPADI Junior Open Water Diverでスキューバ水深12m、12歳はPADI Basic Freediver/PADI Freediverで耳抜き講習開始(海洋実習込み)、15歳はPADI Advanced Freediver、16〜17歳は保護者署名でAIDA2、18歳でAIDA2の正式資格。
図: PADI公式サイトとAIDA2ガイドラインの記載からBLUE BREATHが作成。

団体ごとの下限年齢を、活動の中身とあわせて並べます。

年齢帯 団体・講習 耳抜きとの関わり
8歳〜 PADI Bubblemaker 水深2m未満の閉鎖水域。耳抜き必須の深さではない
10歳〜 PADI Junior Open Water Diver スキューバで水深12m(10〜11歳は保護者かプロ同伴)
12歳〜 PADI Basic Freediver/PADI Freediver 耳抜き技術の講習が始まる。Basicはプールのみ、Freediverは海洋実習込み
15歳〜 PADI Advanced Freediver 水深20m(目標値)。Freediver修了が前提
16〜17歳 AIDA2(保護者署名) 競技団体の正式資格を条件付きで受講可
18歳〜 AIDA2 保護者署名なしで受講可

耳抜きの技術そのものを教える講習が始まるのは12歳からというのが、PADIの設計です。それより下の年齢は、耳抜きが必須にならない浅さで区切られています。

親が陸でできるのは「確認」だけ

上の表を見ると、8〜11歳向けの講習に耳抜きの指導が組み込まれていない理由が分かります。耳管の機能が育っていない年齢だからです。

確認と練習は、別のものです

だから親が家でできることも、上達させる練習ではなく確認になります。つばを飲み込んで、両耳でパチッと音が鳴るか。 これだけです。片方だけ鳴らない、痛みが出る場合は、練習を増やすのではなく耳鼻咽喉科の話です。

風呂で潜らせる、風船をふくらませるといった方法が広まっていますが、練習として設計されたものではありません。詳しくは耳抜きの練習は家でどこまでできる?に書きました。

耳抜きの練習道具として知られるオトヴェント(鼻風船)は、添付文書上「3歳以上の子どもに使用できる」とされています。ただし用途は中耳の陰圧の治療で、常に大人の監督が要ります。潜水の耳抜き技術を練習する道具としては設計されていません。

この記事で確認できなかったこと

  • PADI Skin Diver(Advanced Snorkeler)の公式ページ自体に最低年齢の記載がなく、確認できませんでした
  • AIDAのYouth・Junior向け年齢規定は公式サイトが開けず(403)、確認できませんでした
  • 小学生を対象に耳管が開く圧を実測した研究は見つけられませんでした
  • PADI Freediverの最低年齢は公式内で食い違っています。FAQは15歳、コースページとInstructor Manual 2023の要約表は12歳です。この記事は規格側の12歳を採りました

海に入る前の共通の注意は安全の原則にまとめています。子どもの年齢全般の目安はシュノーケリングは何歳から?、大人の耳抜きの手順は耳抜きができないときに書きました。

次の一歩

  1. 今日、陸でつばを飲ませて、両耳で音が鳴るか確認してください。 鳴らない耳があれば、そこから先は練習ではなく診察の話です
  2. 年齢だけで講習を選ばず、その団体が何歳に何を教える設計かを見てください。 8〜11歳向けは、そもそも耳抜きを必須にしていません
  3. 痛いと言ったら、その場でやめてください。 我慢させて続ける理由はどこにもありません

子どもの耳管が育つのを待つあいだ、親のほうが先に耳抜きの感覚を覚えておくと、海で子どもの様子を見る余裕ができます。

本記事は各一次資料の2026年8月23日時点の記述に基づく情報提供です。医学的な助言ではありません。耳の不調がある場合は、必ず医師にご相談ください。