「日本で野生のイルカと泳げる場所って、どこですか」
この記事は、野生のイルカと泳ぐ旅を計画していて、どこへ行くか決めかねている方に向けて書きました。
答えから言います。公式に「泳げる」と書いてあるのは5か所です。御蔵島、三宅島、利島、小笠原の父島、能登島。 そして、そこで守るべき距離や隻数を決めているのは、法律ではありません。全部が地元の協会や協議会の自主ルールでした。
国が許可を出しているのは、泳ぐほうではなく捕るほうです。使ったのは各地の公式ページと水産庁のページだけです。
泳げる場所と、見るだけの場所
御蔵島は、日本でいちばん名前の挙がる場所です。周りに100頭ほどのミナミハンドウイルカがすんでいると東京都環境局が書いています。ただし観光目的で島周り1km以内に入るには、東京都認定ガイドの同行が要ります。予約の手順と、何泊取れば足りるかは御蔵島は何泊が安全かにまとめました。
三宅島は、島の周りで泳ぐわけではありません。観光協会は「三宅島のお隣り『御蔵島(みくらじま)』の周りには、野生のミナミハンドウイルカが100頭以上生息しています」と書いていて、漁船で片道約1時間かけて御蔵島の近海まで行きます。初めての人はスクール(泳ぎの練習)を受ける必要があり、ウェットスーツの着用が義務です。
利島は、島の周りに約20頭。村は「イルカには絶対触らないなど様々なルールが設けられています」と書き、中身は事業者に聞くよう案内しています。利島の記事に、島の事情をまとめました。
能登島は本州側です。観光協会は野生のミナミハンドウイルカがすむようになったと書き、「七尾湾イルカ保護協力金として ウォッチング:200円~ スイム:500円~」と金額まで公開しています。
天草は少し違います。イルカウォッチングで有名な海ですが、天草市の市民環境課が問い合わせ先になっているサイトにも、受付センターのよくある質問にも、泳ぐという選択肢が出てきません。禁止と書いてあるのではなく、メニューとして存在しない形です。
数字を決めているのは、協会と協議会
小笠原は「4隻まで・5回まで」
小笠原ホエールウォッチング協会は、こう定めています。
ひとつの群れにアプローチできる船は、船の大小を問わず4隻までとする。ひとつの群れに対する水中へのエントリー回数を、1隻につき5回以下とする。 — 小笠原ホエールウォッチング協会「ウォッチングルール」
天草の安全運航協議会は、船の側の決まりを細かく置いています。
- イルカの群れから200m以内は減速する
- 群れのほうから近づいた場合を除き、30m以上の距離をおいて操船する
- 前後左右30m以内に群れがいたら必ず停船する
- 餌付けをしない
- 乗船客には必ず救命胴衣を着けさせる
沖縄の座間味はクジラですが、同じ形です。300m以内を減速水域、100m以内を制限水域としています。
御蔵島の9項目も、観光協会が自分で作った自主ルールです。どれも罰則の記載は見当たりませんでした。守らせているのは、法律ではなく地元の合意です。
捕るほうには、国の許可が要る
一方で、水産庁のページにはこう書かれています。いるか漁業は関係道県知事の許可の下で操業されていること。対象はゴンドウクジラ、ハンドウイルカ、スジイルカなど10種であること。捕獲枠が種類ごとに決められていること。
つまり同じ野生のイルカについて、捕ることは国と県の許可制で、泳ぐことは地元の申し合わせだけ、という形になっています。逆に見えますが、これが今の日本の姿です。
だから「どこまで近づいていいか」の答えは、全国共通ではありません。行く場所ごとに変わります。
泳ぐ前に、泳力を見られる場所がある
自主ルールの筆頭は、どこも「触らない」です。ただ、それと並んで書かれているのが参加者自身の条件でした。
三宅島観光協会は、ドルフィンスイムについて「足のつかない外海で行うアクティビティの為、それなりの泳力を必要とします」と書いています。初めて参加する人は事前にスクール(泳ぎの練習)を受ける必要があり、ウェットスーツの着用も義務です。持病がある場合は事前に伝えるよう求めています。
天草の協議会は、船の側に「乗船客には、安全確認のため、必ず救命胴衣を着用させること」を課しています。見るだけの船でも、浮くものは着ける決まりです。
イルカに近づく話の前に、自分が浮いていられるかどうかが先にある、ということになります。
飼育のイルカと泳ぐ施設は、別の線の上にあります
「ドルフィンスイム 沖縄」「ドルフィンスイム 関西」で出てくるのは、多くが飼育イルカの施設です。野生のイルカを探して外洋を泳ぐ5か所とは、海もルールも別です。
- 石垣島のドルフィンファンタジーは「イケスの中でイルカと一緒に泳ぐプログラム」で、スイムコース12,980円(税込)、4歳以上。5歳以下は保護者も同じコースに参加します
- 和歌山・太地のドルフィン・ベェイスは、ドルフィンスイムが大人(中学生以上)11,000円、小人(3歳〜小学生)8,000円(2026年4月1日改定)
こちらは動物愛護管理法で「展示(動物との触れ合いの機会の提供を含む)」を業として行う第一種動物取扱業にあたり、都道府県知事の登録が要ります。野生のイルカと泳ぐ側には、この登録も、泳ぐ人を縛る法令もありません。あるのは上の自主ルールだけです。子どもと泳ぐなら、御蔵島は何歳からに両方の年齢を並べました。
「伊豆」で調べると、答えが2つに割れます
伊豆半島では泳げません。伊豆諸島なら泳げます。
静岡県の伊豆半島側で、ドルフィンスイムを公式に案内している場所は見つかりませんでした。一方、上に挙げた御蔵島・三宅島・利島は、いずれも伊豆諸島です。
紛らわしいのは行政区分です。伊豆半島は静岡県、伊豆諸島は東京都になります。船が出るのも静岡の港ではなく、東京の竹芝です。
伊豆半島の宿を先に取ると、行き先を間違えます。
この記事で確認できなかったこと
- 天草に遊泳を禁じる明文のルールがあるかどうか(メニューが無いことまでしか分かりませんでした)
- 天草のミナミハンドウイルカの推定頭数(市や研究機関の公表値を見つけられませんでした)
- ドルフィンスイムのツアー中の事故についての公的な記録
次の一歩
- 行き先を決める前に、その場所の自主ルールを読んでください。 隻数も距離も場所ごとに違います
- 料金が公式に出ていない場所は、宿か事業者に直接聞いてください。 御蔵島・三宅島・利島がこれに当たります
- 泳ぐ前に、足のつかない海で泳ぐ準備をしてください。 三宅島は事前のスクールを必須にしています。海に入る前の3つも先に読んでおいてください
本記事は御蔵島観光協会・三宅島観光協会・利島村・小笠原ホエールウォッチング協会・能登島観光協会・天草市・座間味村ホエールウォッチング協会・水産庁の2026年8月22日時点の公開情報に基づく情報提供です。ルール・料金は変わります。参加の前に必ず現地の主催者へご確認ください。
