「日本人の息止めの記録って、何分くらいなんでしょう。世界記録とは、どれくらい差があるんでしょうか」
この記事は、日本の息止め記録が気になる方に向けて書いています。記録に挑む方法を教える記事ではありません。
答えから言います。AIDA公認の日本記録は、男子STA(静止したまま息を止める種目)が7分54秒、女子STAが7分52秒です。 世界記録との差は男子3分41秒、女子1分47秒です。
持ち帰りは3つです。
- 世界記録との差は種目でかなり違います。 深度を競うCWT(フィンを使って深く潜る種目)は男子21m差、水平距離を競うDYN(フィンを使って水平に泳ぐ種目)は80m差です。
- NLTとVWTには、日本記録そのものが存在しません。 選手が挑んでいないのではなく、AIDA競技規則で公式大会での実施が認められていないためです。
- 日本記録を自分で調べようとすると、どこを見ればいいか迷います。 団体によって公式サイトの更新状態が違い、同じ選手でも団体で数字が違う例があります。
日本記録は、種目ごとにどれくらい世界記録と差がありますか
AIDA(国際的な素潜り・フリーダイビングの競技団体)が公認する10種目について、日本記録と世界記録を並べました。息を止めている間に体で何が起きているかは息止めのメカニズムにまとめています。
| 種目(略称・意味) | 男子 日本記録 | 女子 日本記録 | 男子 世界記録 | 女子 世界記録 | 差(男子/女子) |
|---|---|---|---|---|---|
| STA(静止したまま息を止める) | Takuya Terajima 07:54(2026-04-18) | Yuriko Ichihara 07:52(2025-07-01) | Stéphane Mifsud 11:35(2009-06-08) | Heike Schwerdtner 09:39(2026-06-05) | 3分41秒/1分47秒 |
| DYN(フィンで水平に泳ぐ) | Shinya Oi 245m(2023-06-16) | Hanako Hirose 270m(2026-02-15) | Mateusz Malina 325m(2026-06-06) | Zsófia Törőcsik 280m(2025-07-02) | 80m/10m |
| DYNB(バイフィンで水平に泳ぐ) | Shinya Oi 218m(2025-03-16) | Mariko Kaji 232m(2025-03-01) | Guillaume Bourdila 298m(2025-06-28) | Magdalena Solich-Talanda 270m(2026-06-02) | 80m/38m |
| DNF(フィンなしで水平に泳ぐ) | Shinya Oi 180m(2022-05-29) | Mariko Kaji 185m(2026-01-24) | Mateusz Malina 252m(2026-06-03) | Julia Kozerska 213m(2023-06-13) | 72m/28m |
| CNF(フィンなしで深く潜る) | Ken Kiriyama 67m(2019-06-11) | Mariko Kaji 73m(2026-06-14) | Petar Klovar 103m(2025-05-26) | Kateryna Sadurska 86m(2025-11-23) | 36m/13m |
| CWT(フィンを使って深く潜る) | Ryuzo Shinomiya 115m(2010-04-27) | Hanako Hirose 111m(2024-09-27) | Alexey Molchanov 136m(2023-09-29) | Alessia Zecchini 123m(2023-05-24) | 21m/12m |
| CWTB(バイフィンで深く潜る) | Atsushi Kawai 100m(2025-06-02) | Mariko Kaji 93m(2025-06-09) | Alexey Molchanov 129m(2026-07-22) | Natalia Zharkova 112m(2026-05-20) | 29m/19m |
| FIM(ロープを手繰って深く潜る) | Ryuzo Shinomiya 104m(2010-04-27) | Sayuri Kinoshita 97m(2018-07-26) | Petar Klovar 137m(2026-04-20) | Zsófia Törőcsik 107m(2026-08-05) | 33m/10m |
| NLT(そりで潜り、そりで浮上する) | 記録なし | 記録なし | Herbert Nitsch 214m(2007-06-09) | Tanya Streeter 160m(2002-08-17) | ― |
| VWT(そりで潜り、自力で浮上する) | 記録なし | 記録なし | Alexey Molchanov 156m(2023-03-28) | Nanja Van den Broek 130m(2015-10-18) | ― |
深度種目の男子記録は、CWT 115mもFIM 104mもShinomiya選手が2010年4月27日の同じ大会で出した数字のままです。16年更新されていません。一方でプールの3種目と女子の深度種目は、2024年以降に更新されたものが並びます。
NLTとVWTに日本記録がないのは、未挑戦だからではありません
10種目のうち、NLTとVWTだけ日本記録の欄が「記録なし」です。理由は選手の実力ではなく、種目そのものが公式大会で行えない設計になっているからです。
AIDA競技規則は、NLT(重りを積んだそりを使って潜り、浮上する種目)をもうAIDAの公認種目としない、ただし過去の記録は残す、と定めています。
The sled freedive discipline NLT (No-Limits) is no longer sanctioned by AIDA. Although, the history of records will be maintained. — AIDA Competition Rules and Regulations(NLTの項)
VWT(重り付きのそりで沈み、自力で浮上する種目)も、AIDAは大会競技としては認めていません。記録アタックのみを許可する種目だと定めています。どちらも「大会に出られない種目」であるため、日本記録という枠組み自体が生まれません。
日本記録を調べたいとき、どこを見ればいいですか
ここまでの数字を集める過程で、一番手間取ったのがこの点でした。日本記録は、団体によって見える場所も数字も違います。
AIDA JAPANのサイトは、更新が止まっています
AIDA JAPAN(日本フリーダイビング協会)の公式サイトは、大会結果ページが2019年3月17日の項目で止まっています。大会スケジュールも2024年開催分の告知が最後です。日本記録の個人記録ページに至っては、リンク自体が404(ページが見つからない状態)でした。
一方、AIDA International本体のサイトは違います。国別記録のページには2026年8月時点の日本記録が反映されており、イベントカレンダーにも2026年8月の日本国内大会が2件載っていました。日本記録を確認したいなら、AIDA JAPANではなくAIDA International本体を見るほうが確実です。
AIDAとCMAS、団体が違えば日本記録も違います
もう一つの落とし穴は、AIDA以外にも日本記録を認定する団体があることです。日本水中スポーツ連盟(JUSF)内のCMASフリーダイビング委員会(CJAC)が、AIDAとは別に独自の日本記録を公開しています。
こちらはJUSFの記録ページにPDFが置かれていて、2026年8月27日に開いて中身を確認できました。表の日付は2025年12月20日現在です。同じ種目を並べると、数字はAIDA側と一致しません。
| 種目 | AIDA日本記録 | CMAS(CJAC)日本記録 |
|---|---|---|
| STA 女子 | 市原由利子 07:52 | 市原由利子 07:28.11 |
| STA 男子 | Takuya Terajima 07:54 | 横田太郎 06:30.58 |
| CWT 女子 | 廣瀬花子 111m | 廣瀬花子 113m |
| CNF 男子 | Ken Kiriyama 67m | Ken Kiriyama 60m |
| FIM 女子 | 木下紗佑里 97m | 木下紗佑里 90m |
5行のうち4行は、同じ選手の名前が並んでいるのに数字が違います。CWT女子にいたっては、CMAS側の113mのほうがAIDA側の111mより2m深いところにあります。 記録が出た大会が団体ごとに別だからで、どちらかが間違っているわけではありません。
種目の区切り方も違います。CJACの一覧には、AIDAに無いものが3つあります。フィン無しで水平に泳ぐDNFがプールの長さで50mと25mに分かれていること、決められた距離を往復するタイムを競うSpeed Apnea(2×50mから16×50mまで)があること、そして氷の下で泳ぐDYN Under Iceがあることです。50歳以上のマスターズ区分もCMAS側だけにあります。
「日本記録」という言葉だけでは、どちらの団体の記録を指しているのか分かりません。数字を人に伝えるときは、AIDAとCMASのどちらかを添えてください。
この記事で確認できなかったこと
- AIDAがNLTの大会実施を廃止した正確な年。
- AIDA側にマスターズ区分があるかどうか(CMAS側にはあります)。
- AIDA JAPANが現在も実体として活動しているかどうか。
次の一歩
- まず自分の息止め時間を測ってください。 一般的な目安は息止めの平均は何分? 自分の数字をここで測ってみるにまとめています。
- 日本記録を自分で確認したいときは、AIDA InternationalのNational Recordsページで国を「Japan」に選んでください。 AIDA JAPANのサイトより新しい数字が見られます。
- 種目の定義や世界記録との区分をもっと知りたい方は、下の2本も読んでください。 フリーダイビングの世界記録は何m? 種目ごとの数字の読み方と息止めのギネス記録は29分、ただし純酸素を10分吸ってからです。
潜る前の共通の注意は安全の原則にまとめています。
The sled freedive discipline VWT (Variable Weight) is considered to be a record attempt discipline only (National, World Record) and AIDA does not sanction events in which this discipline is a part of a competition. — AIDA Competition Rules and Regulations(VWTの項)
本記事はAIDA・CMAS関連団体の公式資料に基づく情報提供です(AIDA側は2026年8月23日、CMAS側は2026年8月27日に確認)。記録は今後も更新される可能性があるため、最新の数字は各団体の公式サイトでご確認ください。
