「フリーダイビングって、いくらかかるんですか」

この質問に「ピンキリです」と答える記事が多すぎる。実際には、公開されている料金表を積み上げればかなり正確に出せる。この記事は全国のスクール公式サイトとメーカー正規価格から実額を集め、3パターンの総額と年間の継続コストを出す。

金額はすべて2026年8月20日時点の公開表示。出典は記事末尾にまとめた。


結論:3パターンの総額

① 最低限で始める ② 標準的に始める ③ ちゃんと揃える
講習 33,000円 60,500円 130,000円
器材 レンタル(都度) 約39,000円 約320,000円
合計 約33,000〜38,000円 約99,000〜115,000円 約450,000〜500,000円

そして続けるための費用が、年間およそ15万円(月1回プール+年4回海洋の場合)。

多くの人が見落とすのはここで、初期費用より継続費用のほうが大きい。以下、内訳を出す。


講習費:全国のスクール実額

エントリーレベル(最初の1枚)

スクール 地域 コース 料金
Freediving emu 関西 AIDA1 18,000円(冬季割16,000円)※認定料4,000円別
カフー石垣島 沖縄 AIDA1 30,000円(2名以上は25,000円/人)
ぽんた 千葉・伊豆 PADIベーシックフリーダイバー 33,000円(税込)
サニーブルー 横浜 PADIベーシック・フリーダイバー 33,000円(税込・教材費・申請料込)
LUANA 渋谷 AIDA 1STAR 33,000円(税込・施設使用料・申請代込)

相場は3万円台前半。 関西の18,000円が最安だが、認定料が別途4,000円かかる点に注意。

海洋実習を含む標準レベル

スクール コース 料金
ぽんた PADIフリーダイバー(海洋) 28,000円(Cカード申請料別)
Freediving emu AIDA2 49,000円(1名/3日間・2名なら43,000円)
カフー石垣島 AIDA2 55,000円(2名以上は50,000円/人)
サニーブルー PADIフリーダイバー 60,500円(ベーシック取得済なら27,500円+申請料8,030円)
TRUE NORTH PADIフリーダイバー 60,500円(税込)
マレア沖縄 PADIフリーダイバーコース 61,000円(税込)
Freedive MANIA AIDA2 63,000円(税込・認定料3,800円別)
LUANA AIDA 2STAR 66,000円(税込)

相場は5〜6万円台。 ここで効いてくるのが「何が込みか」の差だ。

TRUE NORTH の60,500円には eラーニング(12,100円相当)・カード発行・プール施設利用・海洋施設利用・ウェイトレンタル・送迎まで含まれる。一方で器材レンタルは別(マスク550円/スノーケル550円/フィン&ソックス1,100円)。マレア沖縄の61,000円は器材レンタル代と保険料まで込み。

同じ6万円でも中身が違う。 比較するときは総額ではなく「別途いくらかかるか」を聞くのが正しい。

上級・指導者レベル

コース 料金(ぽんた)
PADIアドバンストフリーダイバー 60,000円
PADIマスターフリーダイバー 65,000円
PADIフリーダイバーインストラクター 178,000円

LUANA の AIDA 3STAR は 75,000円、Freedive MANIA の AIDA3 は 74,000円(税込)。アドバンス相当で6〜7万円台が相場と見ていい。

なお、エントリーから指導者まで一気通貫で取る場合、ぽんたの料金表を積み上げると 33,000+28,000+60,000+65,000+178,000=364,000円。ここまで行く人は限られるが、上限の目安として。

⚠️ 注意:スクールによっては上位コースを開催していない。 サニーブルーは公式サイトに「アドバンスド/マスターは現在開催していません」と明記している。上まで行くつもりなら、最初のスクール選びの時点で上位まで開催しているかを確認するべきだ。


器材費:実売価格で積み上げる

買う順番

先に結論を書くと、買う順番は ① マスク → ② スノーケル → ③ フィン → ④ ウエイトベルト → ⑤ ウエットスーツ が合理的だ。

理由は単純で、マスクだけはレンタルの相性問題が大きいから。顔に合わないマスクは水が入り続けて、それだけで練習にならない。逆にウエットスーツは高価なうえサイズが体型に依存するので、しばらくレンタルで凌いでいい。

① マスク(低容積タイプ)

製品 価格
Molchanovs CORE Freediving Mask 5,500円(税込)
OMER FLY フリーダイビング専用マスク 5,600円

フリーダイビング用は内容積が小さいのが特徴。潜降中に鼻から吐いて圧を合わせる空気の量が少なくて済む=酸素を節約できる。スキューバ用の大きなマスクとは別物なので、ここは専用品を買う価値がある。5,000〜6,000円台

② スノーケル

Molchanovs CORE Freediving Snorkel が 4,180円(税込)。蛇腹や排水弁のない、シンプルな直管型が好まれる。4,000円前後

③ ロングフィン — ここが最大の分岐点

Cressi Japan 公式の価格を並べる(すべて税込)。

製品 価格 素材
GARA TURBO FLEX 18,480円 プラスチック
GARA 2000 HF 23,100円 プラスチック
GARA MODULAR SPRINT 23,100円 プラスチック
GARA MODULAR IMPULSE 30,030円 プラスチック
GARA TURBO IMPULSE 32,340円 プラスチック
GARA TURBO CARBON 103,950円 カーボン

プラスチックとカーボンで3〜6倍の差がある。これが器材費の見積もりを大きく揺らす最大の要因だ。

最初はプラスチック(18,480円〜)で十分だと断言していい。カーボンは推進効率に優れる一方で、壊れる。プールの壁を蹴ったり、岩に当てたりすれば割れる。技術が固まる前に買うものではない。

④ ウエイトベルト

製品 価格(税込)
ナイロンベルト(The Standard) 1,248円
バックル(プラスチック製) 1,199円
ラバーベルト(BEST DIVERS) 2,480円
GULL ウエイトベルト GG-4630 2,673円
GULL アジャスタブルウエイトベルト GG-4618A 14,850円

フリーダイビングではラバー製が推奨される。潜降で胸郭が縮んだときにベルトが緩まないためだ。2,500〜3,000円で足りる(ウエイト本体は別途)。

⑤ ウエットスーツ

製品(Cressi Japan) 価格(税込)
DIVE CENTER ショートウェア 9,240円
DIVE CENTER ラッシングウェア 11,550円
COBIA ジャカード織 17,820円
TERMICO ラッシュスーツ2mm 23,100〜27,720円
TOKUGAWA 3mm 41,580円
APNEA(フリーダイビング専用) 53,130円
KUWAE ラッシュスーツ2-4mm 80,850円

フリーダイビング専用(オープンセル)は保温性と伸縮性に優れるが5万円台。汎用の既製品なら1〜2万円台から。まずはレンタル、次に汎用品、専用スーツは海に通う頻度が固まってから、で十分だ。

⑥ 以降:後回しでいい装備

  • ブイ・フロート:エントリー4,000〜5,000円台(OMER MASTER SPHERE 5,280円、ダイバーズフロート 4,998円)/本格トレーニング用 20,000〜35,000円台(mares TRAINING ブイ 28,160円)
  • ランヤード:Molchanovs プロフリーダイビングラニヤード2 で 13,860円。深度ラインを使う練習で必須になる
  • ダイブコンピュータ:Suunto Ocean 138,900円/Garmin Descent Mk3i 248,000円。フリーダイビング(アプネア)モード搭載機は高価
  • モノフィン:LeaderFins のエントリー 38,500円〜、カーボン 46,000〜78,500円、上位の CetmaComposites TARAS は 194,282円

ダイブコンピュータとモノフィンは、初心者が最初に買うものではない。 どちらも「自分が何をしたいか」が決まってからでいい。


3パターンの内訳

① 最低限で始める:約33,000〜38,000円

  • 講習(PADIベーシック等):33,000円
  • 器材:すべてレンタル(スクールの講習費に含まれるか、1点500〜1,100円程度)

プール完結型のコースを選べば、この額で「フリーダイバー認定」まで届く。まず体験してみたいなら、これが正解。

② 標準的に始める:約99,000〜115,000円

  • 講習(海洋実習込み):60,500円
  • マスク:5,500円
  • スノーケル:4,180円
  • ロングフィン(プラスチック):18,480円
  • ウエイトベルト:1,248〜2,673円
  • ウエットスーツ(汎用既製品):9,240〜17,820円

自分の器材で、海で潜れる状態。ここが実質的な「始めた」ラインになる。

③ ちゃんと揃える:約450,000〜500,000円

  • 講習(AIDA 3コースセット等):130,000円
  • カーボンフィン:103,950円
  • フリーダイビング専用ウエットスーツ:53,130円
  • ダイブコンピュータ:138,900〜248,000円
  • ブイ+ランヤード:42,020円
  • マスク・スノーケル・ウエイトベルト:約25,000円

総額の振れ幅が大きいのはダイブコンピュータの選択で11万円動くため。ここを外せば35万円台に収まる。


継続コスト:年間いくらか

ここが本題だ。初期費用より、こちらのほうが効いてくる。

プール練習会(1回あたり)

スクール 料金
ぽんた(東京アクアティクス自主練習) 3,300円〜
サニーブルー 5,000円(初回7,000円)
PLATYPUS(種目別) 6,000〜8,000円
TRUE NORTH(國富プール) 9,900円(4回券なら8,910円/回)
Purna(2時間) 12,000円〜

1回3,300円と12,000円では、年間で10万円以上の差がつく。 週1回通うつもりなら、ここは真剣に比較する価値がある。

海洋トレーニング(1回あたり)

  • サニーブルー 海洋フリトレ:20,000円(初回23,000円)
  • Purna 海洋フリトレ:18,000円+ボート代
  • ぽんた 海洋練習ツアー(日帰り):12,000円〜

これに交通費と、必要なら宿泊費が乗る。伊豆日帰りなら往復の高速代・ガソリン代で数千円、電車なら1万円前後を見ておく。

会費

  • AIDA JAPAN 正会員(個人):年10,000円(賛助会員6,000円/法人100,000円)
  • DAN JAPAN 年会費:8,000円(保険込み)

年間試算(月1回プール+年4回海洋)

項目 単価 頻度 年間
プール練習会 5,000円 月1回×12 60,000円
海洋トレーニング 20,000円 年4回 80,000円
AIDA JAPAN 年会費 10,000円 年1回 10,000円
DAN JAPAN 年会費 8,000円 年1回 8,000円
合計 158,000円/年

最安構成(ぽんたの3,300円プール+ぽんたの12,000円海洋ツアー)に置き換えると、3,300×12+12,000×4+18,000 = 105,600円/年同じ頻度でも5万円以上変わる。


見落とされがちな落とし穴:保険

ここが、この記事でいちばん注意して読んでほしいところだ。

フリーダイビングは、一般的なレジャー保険・アウトドア保険で補償対象外になっている可能性がある

  • モンベルのアウトドア保険:公式ページが挙げる対象アクティビティ例は「ハイキング・トレッキング、トレイルランニング、サイクリング、カヌー・カヤック、ボルダリング、キャンプ」で、水中活動は列挙されていない。「他にもさまざまなアクティビティが対象」との記載はあるが、フリーダイビングが含まれるかは明記されていない。
  • DAN JAPAN:年会費8,000円に保険が含まれる。ダイビング専門の組織であり有力な選択肢だが、公式の保険ページ本文では「レジャーダイビング中の事故」とのみ記載され、フリーダイビング/素潜りを明示的に含む(あるいは除外する)一文を確認できなかった

つまり、「たぶん入っているだろう」で済ませてはいけない。

必ずやるべきこと:

  1. 加入している(する)保険の会社に、「フリーダイビング(素潜り・アプネア)中の事故は補償対象か」を名指しで確認する
  2. 対象なら、深度や器材の条件が付いていないかを確認する
  3. 回答を書面またはメールで残す

スクールの講習費に「保険料込み」と書かれている場合も、それは講習期間中のみの傷害保険であることが多い。自主練習や個人での海洋潜水はカバーされない可能性がある。


この記事で確認できなかったこと

正直に書いておく。

  • DAN JAPAN のフリーダイビング補償の可否:公式ページ本文からの直接確認ができなかった。上記の通り、必ず各自で照会してほしい。この記事では「対象である」とは書かない。
  • 伊豆・井田などでのフリーダイビング専門のガイド料・施設利用料:スクーバの料金しか確認できず、単独の相場を出せなかった。本文の海洋トレーニング費用はスクール練習会の実額で代用している。
  • ウエットスーツのフルオーダー価格:割引率の表示のみで、基準価格の絶対額を確認できなかった。
  • 一部メーカーの実売価格(GULL・TUSA のマスク等):公式サイトに価格表示がなく、正規販売店ページからも取得できなかったため、掲載していない。
  • Molchanovs・SSI の一般会員年会費:公式ページからの確認ができなかった。
  • Freediving emu(関西)の料金:公式サイトへの直接アクセスができず、検索結果経由の数値のため、他より確度が一段低い。受講前に必ず直接確認してほしい。
  • BIG BLUE(東京)の講習料金:非公開(要問い合わせ)。

料金は改定される。この記事は定期的に更新する。


掲載金額は各社の公開情報に基づく2026年8月20日時点の表示です。税込・税別の別が明記されていないものも含まれます。実際の費用は開催店舗・時期・人数により変動するため、必ず各スクールへご確認ください。